フィリピンのイスラム教とハラール事情
国民の8割以上がキリスト教徒で形成されるフィリピンですが、5%はイスラム教徒です。
人口1億人を突破したフィリピンにおいて、5%は500万人以上。
そのほとんどはミンダナオ島で暮らしています。
そんなイスラム教徒にとって重要なのが、ハラールフード。
イスラム教徒が一定数いるフィリピンでは、ハラールフードが比較的簡単に手に入るほか、ハラールフードのレストランも増えつつあります。
<ハラールフードとは?>
「ハラール(ハラル)」とはイスラム法で許された項目のことを指します。
つまり、ハラールフードとは「食べることを許された食品」です。
イスラム法の下では、豚肉を食べることが禁じられていますので、ハラールフードにはまず豚は使われません。
その他、犬、牙や爪があるトラや猫などの動物、キツツキ、ロバ、ラバなどの動物も食べてはいけないとされています。
また、それ以外の肉であっても、正規の手順にしたがって屠殺されたものでなければ食べてはいけないルールです。
単に食材ではなく加工のプロセスにも大変複雑な規制があるため、ハラールフードには決まった表示を付けて、判断できるようになっています。
<基準のない”ハラールマーク”>
イスラム法の基準に沿って加工されたかどうかを示す”ハラールマーク”ですが、実は世界で統一されているわけではありません。
国によって表示が違う上、ハラールの定義も異なることがあります。
これは、イスラム教の教えにおいて、「信仰とは神と個人との契約」だと定義されているため、一概に何が正しいとは言えない、という曖昧な概念があるからです。
つまり、絶対的に正しいハラールも存在しないということになります。
そのため、イスラム教徒は自分が信じているハラールマークだけを頼りに食品を選んでいることも多いそうです。
エジプトなど国民のほとんどがイスラム教徒の国では、売られているものもほとんどがハラールに沿っていますが、特にフィリピンなどの東南アジア地域では、気をつけていないと信仰に背いたものを食べかねないのです。
フィリピン料理の多くに、豚肉が使われています。
また、豚肉を使っていなくても、豚に触れたものや豚と一緒に運ばれたものも食べてはいけない、というかなり厳しいルールもあります。
フィリピンのハラールがそこまで厳格に基準を守っているのかは、正直言って謎です。
なお、サウジアラビアなどのイスラム教国家では、ハラールでない食品を販売したり、ハラールでない食品をハラールだと偽って販売することは、犯罪になります。
現在、イスラム諸国会議では、ハラールの世界基準規格を作ろうと議論されていますが、政治的な利害関係や文化の違いなどがあり、簡単にはいかないようです。
<フィリピンで見かけるハラールマーク>
フィリピンでも、コンビニやスーパーでハラールマークの付いた食品を見つけることができます。
フィリピンにもフィリピン独自のハラールマークがあるので、それが使われているか、あるいはインドネシアの認証団体のものが使われていることが多いようです。
<フィリピンのハラール認証ホテル>
フィリピンには、ハラール認証を取得したホテルもあります。
これらのホテルでは、イスラム教徒も安心して食べられる食品を提供しています。
また、イスラム教徒向けに部屋にコーラン(イスラム教の教典)が置かれていたり、お祈りのためにメッカの方向を知ることもできるようになっているとのことです。
■ベルジャヤ・マカティ・ホテル
マニラのマカティにある、3つ星ホテル。1泊7,000円〜
■マニラ・マリオット・ホテル
朝食が美味しい4つ星ホテル。
■クリムゾン・リゾート・アンド・スパ・マクタン
セブのリゾートエリアにある高級5つ星ホテル。
<フィリピンのハラールレストラン>
肉でも魚でも米でもお菓子でも、とにかく食欲旺盛なフィリピン人。
多くの場所ではほとんど何の規制もなく、豚肉を含むあらゆる食材が使われています。
しかし、イスラム教徒の住民や観光客も安心して食事ができるよう、ハラールレストランもたくさんあります。
マニラにあるおすすめのレストランをいくつかご紹介します。
■Spiral
バラエティ豊かな品々が並ぶビュッフェスタイルのレストランです。
ハラールフードのほか、ベジタリアン料理やヴィーガンフード、グルテンフリー料理など、様々な制約がある人でも食事が楽しめるようになっています。
もちろん、イタリアンやフレンチ、中華、インド料理、和食などなど普通の人が食べたいものもたくさん揃っており、味も非常に評価が高いです。
住所:CCP Complex Atang Dela Rama Sofitel Philippine Plaza Manila
■Shawarma Snack Center
マラテ地区にある、ハラール料理、中近東料理、地中海料理の専門店です。
ハラールのほか、ベジタリアンメニューやヴィーガンメニューもあります。
中東のスパイスが効いた、美味しいケバブがいただけます。
住所:45 Salas St Malate
■Mister Kabab
平均価格が200〜800円ほどという、安価で楽しめる中近東料理レストラン。
メトロマニラのケソンシティにあります。
店名の通り、おすすめメニューはケバブです。
95A West Ave Quezon avenue 2 Nd Floor Fisher Mall
■Arya Persian Restaurant
ラムのケバブが美味しい、ペルシャ料理レストラン。
値段はそこそこ高いですが、日本人でも安心して食べられるクオリティ。
住所:Pedro Gil St Midtown Wing, 2nd Level, Robinson Place Ermita
<日本とハラール>
フィリピンや他のアジア諸国と違って、日本にはイスラム教徒がほとんどいませんので、ハラールについて考えることはあまり無いかもしれません。
しかし、最近は日本にもムスリムの観光客が増えてきています。
フィリピンをはじめとする、イスラム教徒を抱える国々の経済成長が著しいためです。
代表的なのはマレーシアやインドネシアなどです。
そのため、日本でもイスラム教徒の人たちが不自由なく滞在できるよう、ハラールフードやお祈りの場所を提供するなどの対策が必要だと言われています。
実は近年、「ハラールビジネス」と称されたものが流行し、「ハラール食品」「ハラール化粧品」「ハラール医薬品」など様々な分野でハラール製品が作られるようになりました。
しかしながら、日本の企業が持つハラールの知識はまだまだ浅く、実際にはイスラム教徒がちゃんと理解されているとは言い難い状況なのだそうです。
一体何が「ハラール」なのか?
ムスリムの間でもその定義が曖昧であるがゆえに、日本人である私たちは余計に混乱してしまっているのでしょう。
2020年には東京でオリンピックが開かれ、ますます多くのムスリムの人々が日本へやって来ます。
東京を中心にハラール料理レストランも増えてきてはいますが、それが本当にイスラム教徒の人々の信仰に反しないものなのか?を、見極めるのは簡単ではなさそうです。