新常態(ニュー・ノーマル)へ向けて動き出したフィリピン
新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界は大きく変わろうとしています。
経済のシステムや人々のライフスタイルなど全てがこれまでとは全く違ったものになり、”アフターコロナ”では、「新常態(ニュー・ノーマル)」が生まれると言われているのです。
■新常態(ニュー・ノーマル)とは?
「新常態(ニュー・ノーマル)」とは、新たな常識や状態を表す言葉で、構造的な変化が避けられない状態を指します。
2007年〜2008年にリーマン・ショックが起こった際に、もう元の状態へは戻れないということを表すためにも用いられました。
2014年に金融危機を迎えていた中国の習近平国家主席が使った言葉としても知られています。
■フィリピンも新常態へ向けて準備
3月からロックダウンで大規模な移動・外出制限を行い、経済的に大きなダメージを受けているフィリピンもまた、「新常態」へ向けて準備せざるを得ない状況を迎えているようです。
フィリピン下院は、フィリピンの新たな社会規範を定めたニュー・ノーマル法案「House Bill No. 6623(=HB 6623)」を議会に提出したとのこと。
この法案が通れば、今後3年以内には、公共スペースや職場における新しい規律が制定されることになります。
具体的には、マスクの着用や最低1メートルのソーシャル・ディスタンシング確保の義務などです。
また、検温や手洗い、除菌コーナーの設置なども盛り込まれる予定となっています。
これらは新型コロナウイルス対策のロックダウンが終わったあとも継続するとしており、ドライブスルー検査を含む大規模なコロナウイルス検査も引き続き行われます。
もっと多くの隔離施設や研究所を建てるため、検査キットと防護服の入手にも尽力していくとのこと。
■公共交通機関
HB 6623の下では、出勤や帰宅の時間帯を人によってずらしたり、そのために公共交通機関のスケジュールを変更したりするような計画も実行していきたいとしています。
電車のチケットを買ったりする際に列に並ぶにあたっても一定の間隔を空け、乗車前には手を消毒することも求められるようになるとのこと。
駅はもちろん、空港や港では体温のチェック、新型コロナウイルスの簡易検査が行われ、従業員も感染していないかを定期的に確認されるシステムが導入されます。
バイクタクシーについてはまだ営業停止を継続させるとのこと。
■学校・教育
学校についてはまだしばらく休校になるようですが、教育を滞らせないために、Eラーニング(オンライン授業)の導入が勧められています。
また、学校に通えるようになってからも、物理的な距離をとることはルール化されるということです。
■企業・飲食店
企業については、新常態へ向けたマネージメントプランの提出を求めるとのこと。
飲食業界に関しては、デリバリーとテイクアウトのサービスは継続できます。
店内飲食については、徐々に規制緩和していくとしているものの、隣のテーブルとは2メートル以上空けることを義務付ける、とのことです。
ビュッフェやサラダバーはまだしばらく禁止。
その他、店内のアルコール除菌を徹底すること、自動ソープディスペンサーや使い捨てメニュー、使い捨ての食器を用意することとしています。
■商業施設
ショピングモールや服屋、スーパー、銀行などの商業施設には、敷地内に入れるお客の人数を制限することを求めています。
また、支払いの際には現金ではなくオンラインやキャッシュレスの決済が求められるということです。
■オフィスビル
オフィスビルに関しては、一度にエレベーターに乗る人数を制限することが義務付けられます。
また、カフェテリアを出来るだけ利用しないよう自動販売機の設置を増やすとのことです。
企業は物理的なミーティングは避け、オンライン会議に切り替えるよう求められます。
■サロン、スパなど
サロンやスパは営業を再開できますが、従業員はマスクと手袋の着用が義務付けられます。
また、定期的に手洗いと器具の洗浄を行わなければなりません。
■新常態・HB 6623適用までの流れ
HB 6623の適用前には、上院と下院による3度のチェックが必要で、その後、ドゥテルテ大統領がサインできるという流れになっています。
現在18回目の議会は休会中となっており、次回は5月4日の予定となっています。
議会はオンラインで行われる予定となっており、この法案を通す方針です。
■日本はどうなの?
新常態(ニュー・ノーマル)へ向けてフィリピンはかなり具体的に動いていますが、日本はどうなのでしょうか?
今のところ、新しい社会システムの導入といったニュースは入ってきません。
オリンピックの延期や学校の新学期を9月にずらすなどの対策は発表されていますが、根本的な感染症対策にはまったくなっていない状態です。
新型コロナウイルスがもたらした不況は、リーマン・ショックをはるかに上回っており、影響を受けていない国などありません。
このままイベントを延期するだけで十分な対策と言えるのか疑問です。