カナダからの不法輸出ゴミがついに返還されることに
フィリピンで問題となっていたカナダからの不法な産廃ゴミについて、新しい動きがあったようです。
フィリピンのテオドロ・ロクシン外相のツイッターによれば、カナダから違法に輸出されていた産業廃棄物を含むごみコンテナ69個が、5月30日にカナダへ返還されることになったとのこと。
■カナダからの不法なゴミ問題
事の発端は、2013年〜2014年にカナダからフィリピンへ送られてきた貨物コンテナ。
書類上は、再生可能なプラスチックが入っていると記されていました。
しかし、中を見てみると実際に入っていたのはリサイクル不可能な産業廃棄物や電化製品廃棄物などで、さらには家庭ゴミまで混ざっていたのです。
これを受けて怒り心頭のフィリピン政府は、カナダに対しゴミを引き取るよう求めていました。
■宣戦布告&カナダ大使が召還される
昨年ボラカイ島を閉鎖して海洋汚染の改善を行なったり、マニラ湾も清浄したい考えを示すなど、環境問題には敏感なドゥテルテ大統領も、怒りを露わにしました。
「一週間以内に引き取らないのなら、戦争も辞さない」と宣戦布告。
対するカナダのトルドー首相は、ゴミを輸出したのは民間業者であり、政府に責任はないと主張していました。
しかし、当然ながらドゥテルテ大統領にはそんな言い訳は通用しません。
結局、5月15日までに回収するとカナダは約束しましたが、それも果たされず、ついにフィリピンからはカナダ大使を本国へ召還させるに至りました。
■フィリピン国民もデモ
この問題を知った国民もまた、カナダへの反感を強めていました。
街中ではカナダ政府に対しゴミを回収するよう求めてデモが勃発。
国全体が「反カナダ」で盛り上がる事態にまで発展しました。
■政府間交渉が凍結
カナダ大使が召還されても、マニラ湾にはカナダからのごみコンテナが残ったまま・・。
フィリピン政府の交渉になかなか応じないカナダは、回収の手続きは6月末までかかると言い出します。
これに対し、ドゥテルテ大統領が次の一手を下しました。
5月26日、政府職員がカナダを訪問することを禁止したのです。
これまでは外交にまでは影響がありませんでしたが、ついに両国間の政府間交渉や連絡が凍結する事態となりました。
■ついに回収段階へ
ドゥテルテ大統領の強硬な姿勢により、カナダはこれ以上問題を先送りにできないと悟ったのでしょう。
ついに書類上の手続き完了し、あとはカナダの民間企業が用意したコンテナ船にゴミを積み込んで出航するのみ、という段階まで進みました。
出航は30日を予定しているとのこと。
■もともと廃プラのリサイクルを行なっていたのは中国
もともと、プラスチックの回収とリサイクルは1980年以降中国が主に行なっていました。
中国国内にある施設で分別・加工して、新たな製品の原料を作っていたのです。
日本からも、2000年頃から大量の廃プラスチックを中国に輸出しており、2016年には約900万トンの廃プラスチックのうち約130万トンが中国へ送られていました。
しかし2017年、中国政府は「輸入廃棄物管理目録」を改定し、2018年には資源ゴミを輸出することができなくなります。
中国が廃プラの輸入を規制した理由としては、ゴミの量に対しリサイクル体制が間に合っていないことや、今回カナダのケースと同様リサイクルごみの中に再生不可能な廃棄物が混入されるようになったからです。
それに加え、中国の経済成長に伴い自国から排出されるゴミも増え、対処できないまま不法投棄されるなど、環境問題になっていました。
■東南アジアが”世界のゴミ捨て場”に
中国がゴミを受け入れなくなったため、日本をはじめとする先進国は、新たな廃プラスチックの輸出先を見つけます。
それが、フィリピンを含む東南アジア諸国でした。
フィリピンではカナダの他にもオーストラリアからリサイクル不可能なゴミが送られてきたことがあります。
書類上はセメント工場で燃料になるとして輸入許可をとっていましたが、実際には燃料にすると有害物質を排出するゴミだったため、不法だとしてメディアで取り上げられました。
その他、香港から申告書類と異なる電化製品の廃棄物25トンが届くなど、不正ゴミ輸出問題はあとを絶ちません。
フィリピン以外だと、マレーシアで同様の問題が深刻化しています。
マレーシアもまた、スペインから輸出された以上な産廃ゴミを受けて政府が対応に追われるなど、東南アジアは今や「世界のゴミ捨て場」のようになってしまっているのです。
■フィリピンのゴミ山とスカベンジャー
フィリピンを実際に訪れてみるとわかりますが、この国のゴミ処理システムは日本と比べると圧倒的に遅れています。
可燃ごみとリサイクルごみで一応分別はされていますが、実際には住民に分別ルールが浸透しておらず、どちらも混ざった状態で同じ日に回収され、ゴミ集積場へ運ばれていきます。
そして、最も問題を大きくしているのは、焼却場が整っていないこと。
プラスチックごみを燃やすと有害なダイオキシンが発生しますが、それを適切に処理する設備もありませんので、結局はただ積み重ねてゴミの山を作っています。
いわゆる「スカベンジャー」が暮らすゴミ山は、このように一般家庭から運ばれてくるゴミで出来ているのです。
スカベンジャーはこのゴミ山から金属やプラスチックなど生ゴミ以外のゴミを拾い集め、それをお金に換えて生活しています。
彼らにとっては、分別されていないゴミは宝の山というわけです。
しかし、ゴミ山は不衛生で有害なガスが発生し、時には火事が起こることもあるため、近年は政府によって閉鎖されるものも増えてきました。
■一人一人の意識も大事!
毎日出されているゴミのうち、4分の1はリサイクル可能なプラスチックだと言われています。
上手に利用すれば、環境問題の改善に繋がるだけでなく、経済効果も高いはずです。
しかし、東南アジアに丸投げの状態ではなかなか解決しません。
今後、ASEAN単位でゴミ問題に着手する必要が出てくると思われます。
私たち日本人も、小さなことかもしれませんが、日々きれいなプラスチックを分けて出したり、出来るだけゴミ事態を出さないよう意識することが大事ですね。