フィリピンのHIV感染者が過去5年で2倍に
フィリピンでは今、HIV(人免疫不全ウイルス)の感染が急速に拡大しており、問題となっています。
HIVは、ご存知の通り後天性免疫不全症候群(エイズ)を発症します。
■2013年〜2018年で感染者が2倍に
フィリピンでは2013年〜2018年という5年間の間に、HIVの感染者が2倍に増えました。
これは今、世界で最も大きい伸び率なのだそう。
世界規模では少しずつ減少しているHIV感染者ですが、フィリピンでは逆に増えている状況なのです。
■感染しているのは主に男性
1984年〜2007年までは、HIV感染者は男女間の性行為が原因で広まっていました。
しかし近年は、15〜34歳の若い男性の間で拡大しているそうです。
原因は、ホモセクシャルやバイセクシャルの男性同士による性行為です。
近年新しく感染した人の実に84%が同性愛者もしくはバイセクシャルの男性となっています。
これはフィリピンだけに見られる大きな特徴で、世界では同性間による性行為で感染している人は17%程度です。
■背景にあるのは出会い系アプリ?
フィリピンには同性愛者が多数存在しますが、ここ数年で性行為を行うカップルが増えた背景には、出会い系アプリがあると言われています。
同性愛者が多い国とはいっても、まだまだ社会でオープンにできる人はそう多くありません。
そんな中、出会い系アプリが登場したことによって、容易に相手を探すことができるようになりました。
アプリを使って簡単に出会い、体の関係を持つのです。
■キリスト教国家だからこそ広まる出会い系アプリ
フィリピンはキリスト教国家であり、国民の80%以上が敬虔なカトリック教徒です。
その教えの中では同性愛は禁止されています。
ですので、余計に世間に自分がバイセクシャルやホモセクシャルであることを晒すことができないのです。
スマホの出会い系アプリを使えば、誰にもばれずに隠れて恋人を見つけることができます。
■なぜ予防しないのか?
これだけHIVが蔓延しているのなら、避妊具を使うなど、性行為を行う際に防衛策を取れば良さそうなものです。
しかし、フィリピンでは実は性教育が圧倒的に遅れているという事実もあります。
適切に避妊具を使えば病気を防止できることも、避妊具の使い方も、そして性行為に及ぶことへの責任なども、知らないまま大人になるのです。
さらに、まともに教育を受けられないような貧しい青年たちも、フィリピンでは安価でスマホを持つことができます。
こうして知識だけが欠落したまま、出会い系アプリを利用することだけは出来るようになっているのです。
■HIVスクリーニング検査の対象年齢引き下げ
HIVに感染しているかどうかを調べるには、まず第一段階として、HIVスクリーニング検査というものを受けます。
しかし、フィリピンでは必要な人々がこの検査を受けられていないという現状もあります。
このためフィリピン議会では、今年から学校での性教育を推進するとともに、HIVスクリーニング検査の対象年齢をこれまでの18歳から15歳へと引き下げる流れになっています。
また、保険証でも同性愛者が集まるクラブやコンテストなどのイベントで、HIV抗体の簡易検査を行うようになりました。
検査で陽性が出た人には、ARVという治療薬を投与すると発表しています。
■日本人にも感染の危険はある
様々な複合的な原因が重なり、男性のHIV感染者が増えているフィリピン。
適切な性教育や検査ツールが提供されなければ、今後も増加していく一方でしょう。
また、検査が受けられる施設も不足していますし、怖くて検査を受けたくないという人も多いです。
政府のデータによれば、感染が明らかになっている人のうち、ちゃんと治療を受けている人は半数にも満たないのだそう。
ただ、この深刻化した自体を受けて、ボランティアで検査を行う団体なども出てきています。
HIVやエイズは、日本ではあまり馴染みがないものかもしれません。
しかし、フィリピンへ行って歓楽街で夜遊びすれば、いつどこで感染するか分からないのです。
避妊具を使うなど、節度を持って行動するようにしてくださいね。