フィリピン首都圏で深刻な水不足
フィリピンの首都マニラでは今、水不足が深刻化しています。
3月上旬から各地の村で水不足が始まり、先週には都市部まで拡大し、地域によっては何日間も水が供給されない状態が続きました。
ここ10年で最も深刻と言われる事態となっており、不足している水は1日あたり1億4,000万リットル以上です。
今回水不足が起こっているのは、アヤラ・コーポレーション傘下の公益水道会社「マニラ・ウォーター」が管轄するマニラの東半分のエリア。
水不足が起こった原因として、ダムの貯水量の減少、水の需要増加、そしてインフラ整備の遅れを挙げています。
また、ダムの貯水量が減ったのは、太平洋東部の海面水温が高くなる「エルニーニョ現象」の影響で降水量が減ったためであると説明しました。
「エルニーニョ現象」は、水不足だけでなく農作物への被害も大きいため、経済的に大きな損失を与えるとされています。
すでに南部のミンダナオ島などでは干ばつなどの農作物への被害が拡大しているということです。
マニラ・ウォーターが管理している「ラメサ・ダム」。
ここへ「ラグナ湖」から毎日1億リットルの水を供給するため、同社では処理施設を作っていますが、実は稼働しているのはほんの一部。
ラメサダムの水位が69メートル以下になるとマニラ・ウォーターの処理施設には水が流れなくなります。
今回、ラメサ・ダムの水位は1998年以来初めて、危機的とされる水準以下まで低下しました。
これ以外の水源を確保していなかったことについて、マニラ・ウォーターは責任を認めており、社長は辞任も考えているようです。
まず最初に、マニラ・ウォーター管轄の十数の村で断水が始まり、最終的には100万世帯以上が計画断水の対象となりました。
管轄エリアで1日6〜21時間という長時間水が止まり、供給されるのは午後2時〜5時までというごく短い時間に限られました。
数千人の住民がバケツなどを持ち、給水ポンプや消火栓の前に長蛇の列を成して水を求めたそうです。
また、マニラ・ウォーターの管轄ではないマニラの西側まで移動し、水が出る家を訪ねて分けてもらう人も大勢いました。
中には消防車を追いかける人もいたり、小売店では水を入れるための容器は全て売り切れになり、病院では重症患者しか受け入れない状況となりました。
一部のレストランではドリンクの提供ができなくなったほか、ショッピングモール内のトイレも一部閉鎖、そしてマカティの高級ホテルであるペニンシュラ・マニラでは噴水を停止しました。
経済中心地のマカティなど都心でもここまでの影響が出ているとなると、状況の深刻さが伺えます。
この事態を受けてドゥテルテ大統領は、ブラカン州のアンガット・ダムから150日分の水約6,000億リットルを不足地域へ供給するよう指示を出しました。
しかし、インフラ不備のため1日に40億リットル以上供給することはできず、依然として不足が続いています。
マニラ・ウォーターでは、断水は雨季が始まるまで今後も3ヶ月に渡って続くとの見通しを示しており、古井戸の利用再開も推進しているということです。
今回の水不足で影響を受けたエリアのうち、90%は3月18日までに供給が復旧していますが、全供給エリアが完全に復旧するのは5月末になると説明されています。
マニラ・ウォーターの責任が問われるニュースとなっている一方で、「マルコス政権時代からダムの新設計画は提案されていたのに、実現していない政府にも責任がある」として、政府系の首都圏水道局も非があることを認めています。
マニラでは1985年頃から人口が増加し、都市が発展を続けていますが、一方で水道供給網の整備の遅れや、ダムの老朽化が指摘されてきました。
水不足が起きる原因は多々あるものの、こういう事態になるとやはりフィリピンのインフラの弱さが露呈していると感じます。
何か問題が起こった時に備えて、別ルートから物資を供給することができれば、また状況は違ってくるはずです。
エルニーニョ現象による降水量の減少は、人間が防げることではありません。
兎にも角にも路線や道路の整備が整うことが、フィリピンの様々な問題解決と更なる経済発展に繋がるのではないかと思います。