オンラインカジノを巡る中国とフィリピンの関係
フィリピンと中国の間で最も大きな問題となっているのは南シナ海の領海についてですが、ここ最近はオンラインカジノやオンラインゲーミングの規制に関しても議論が交わされています。
今やシンガポールをも超える勢いで成長しつづけているフィリピンのカジノ産業。
ここに大勢の中国人が観光客として訪れお金を使っているだけでなく、事業そのものに関わっている者もいることを、中国政府としては由々しき問題と考えているようです。
<フィリピンのオンラインカジノ>
オンラインカジノとは、その名の通り、コンピュータのネットワーク上で仮想的に行われるカジノのこと。
日本では通常のカジノと同様ライセンスの発行はしていませんが、海外から正当なライセンスを取得して日本でもそのマーケットを広げようとしている人たちが一定数いるようです。
フィリピンでは今、普通のカジノのほかに、このオンラインカジノ市場が大きく成長しており、2018年は60億ペソもの収益があったとのこと。
ご存知の方も多いかもしれませんが、フィリピンのカジノは公営となっており、公営賭博会社であるフィリピン・アミューズメント・アンド・ゲーミング(PAGCOR)が、オンラインカジノのライセンス発行も行なっています。
現在、ライセンスを受けてカジノ営業をしている企業は55社以上。
ただし、オンラインカジノでプレーヤーとして遊べるのは外国人だけ。
また、ドゥテルテ大統領が政権を握ってからは、オンラインカジノに規制が設けられ、多くの海外オンラインゲーミング事業者が運営できなくなりました。
ライセンス発行も50社までに制限する予定だそうです。
しかしながら、フィリピン経済にとってオンラインカジノが大きな収入源になっていることも事実。
ドゥテルテ大統領としては、オンラインカジノに代わる利益確保ができない限り、完全に禁止にする意向はなさそうです。
<フィリピンのカジノのお客は中国人富裕層>
フィリピンでは通常のカジノもオンラインカジノも、その主な顧客は中国人の富裕層です。
なぜわざわざフィリピンで賭博をやるのかというと、中国ではギャンブルは禁止だからです。
もちろん、個人レベルで麻雀やトランプ、将棋などの賭け事を楽しむことはありますが、カジノのような遊技場は存在しないのです。
中国の富裕層は、半端ない資産を持っており、お金を使って遊ぶ場所をいつも探しているのだとか。
フィリピンでのカジノおよびオンラインゲームは、彼らにとってエキサイティングな使い方だったようです。
<なぜフィリピンなのか?>
マカオやシンガポールなど、他にもカジノはあるのになぜ中国人はわざわざフィリピンへカジノをやりに来るのか?
その理由としては、マカオはまず渡航規制が入ってしまったので行ける人が減ってしまったということ。
そしてシンガポールに関しては、喫煙やポイ捨て禁止という厳しいルールがあり、中国人とってはちょっと窮屈なのだそう。
そんな中、規制もなく街の条例も緩く自由にカジノで遊べるフィリピンは、中国人富裕層にとって大変都合の良い場所だったのでしょう。
最近はフィリピンでも喫煙については規制が厳しくなりましたが、シンガポールと比べればまだまだ寛大です。
<オンラインカジノって違法なの?>
オンラインカジノは、違法だと訴える人も多いです。
日本でもグレーなものとして扱われています。
2015年には、日本国内のパソコンから海外の合法オンラインカジノにアクセスした人たちが「賭博罪」の容疑をかけられる事例がありました。
ほとんどの容疑者は罰金を払って事を収めましたが、一人は納得がいかないとして裁判を起こし、結果として不起訴になったのです。
しかし、違法なオンラインカジノが存在していることも事実です。
2016年には、労働ビザを持たない中国人1,200人が違法オンラインカジノで働いていたとして、フィリピンで逮捕されました。
<フィリピンのカジノは”中国資金の違法流出”>
このような事件に加え、中国政府が懸念しているのは、富裕層が持つ資金のフィリピンへの流出です。
本来違法であるカジノに自国の人々が多額のお金を費やし、しかもそれが中国ではなくフィリピンの収益になっていることを、”中国資金の違法流出”だとしています。
中国大使館は、「オンラインギャンブル、海外でのギャンブル、中国人を対象にしたカジノの海外での開業を含むいかなる形式のギャンブルも禁止」と述べており、今後は海外でのギャンブル活動をより厳しく取り締まっていく考えのようです。
<ドゥテルテ大統領の対応>
ドゥテルテ大統領は中国からのカジノ規制要請に対し、オンラインカジノを全面的にやめるようなことはしていないものの、その運営ライセンス発行は一旦停止しています。
中国政府は、「新規申請を一時停止するだけでなく廃絶または終了されればさらに感謝する」と述べています。
<先週の会談では・・・>
こういった経緯がある中、先週中国の北京では、ドゥテルテ大統領と習近平国家主席による対談が行われました。
しかし、話の内容は南シナ海の資源を共同開発していくことがメインで、カジノ規制に関しては特に言及されなかったようです。
中国側も、会談ではオンラインギャンブルの禁止を要求することはなかったとのこと。
<しばらくは現状維持か?>
いずれにしても、フィリピンが突然オンラインカジノを禁止にしたり、運営ライセンスの発行を完全にやめる、といったことはすぐには起こらなさそうです。
ドゥテルテ大統領は、南シナ海問題を含め、中国との関係は良好に保ちつつ、自国の収益を落とさないための対策を考えているのかもしれません。