フィリピン人の能力と雇用の際のポイント
フィリピンでビジネスを始めようと思ったら、現地フィリピン人を雇う機会も出てくるでしょう。
フィリピンは今、人口の急激な増加によって労働力が余っている状態であるため、買い手市場と言われています。
ちょうど、現在の日本とは逆ですね。
人口が多い分、有能な人材も多く隠れているでしょうし、選び放題とも言えます。
しかし、その人の能力に関わらず、フィリピンと日本では働き方に大きな違いがあります。
文化の違いや習慣の違いと言っても良いでしょう。
それを知らずに日本の感覚でビジネスをしようと思うと、人間関係にストレスを感じてしまうことも少なくありません。
そこで今回は、フィリピンでフィリピン人を雇う際に知っておきたいポイントや、フィリピン人ならではの能力、職場で気をつけたいことなどについて見てみたいと思います。
<契約社員は最長6ヶ月>
フィリピンで人を雇うのに知っておきたいポイントして、雇用形態があります。
フィリピンでは働く人の大多数が契約社員もしくはアルバイトなどの非正規雇用です。
ただ、日本のように何年も非正規で雇用することはできず、6ヶ月経ったら正社員にしなければならないルールがあります。
これは、学生だろうとファストフードのバイトだろうと変わりません。
半年以上経っても正規雇用せずにいると、労働局から指摘を受けることになります。
もしも半年以上働いて欲しくないと思っている従業員がいたら、少なくとも5ヶ月以内には解雇するかどうか考える必要があります。
<仕事をコロコロ変わるフィリピン人>
最長6ヶ月しか契約社員として雇えないため、結果的に半年以内で辞めて別の仕事に就くフィリピン人が非常に多いです。
また、雇用側も正社員雇用するとコストがかかるため、従業員が6ヶ月で辞めるように仕向けているケースも多々あります。
そのため、1つの職場に長く務めたことのあるフィリピン人は稀です。
<基本的にモチベーションは低め>
フィリピンでは、昔の日本のように会社のことを考えて仕事を一生懸命頑張る、という精神は基本的にあまりありません。
そもそも半年しかいないのに、そんなに深入りする理由もないわけです。
必然的に、仕事へのモチベーションは低くなります。
<最近は正社員登用が増加している>
そんな契約社員社会であるフィリピンでは長年、「会社が半年で従業員を解雇し、すぐにまた契約社員として雇い直す」という法をくぐり抜けるための悪行が繰り返されてきました。
しかし、このままでは人が育たず、フィリピン経済の停滞にも繋がります。
そこで政府からも圧力がかかり、現在は以前よりも非正規雇用労働者を正規雇用化する動きが進んでいます。
日系企業も例外ではなく、2017年にはフィリピンの東芝が4,000人の非正規労働者を正規雇用に切り替えました。
<フィリピン人の働き方>
さて、フィリピンでは雇用形態に関する規定が日本と違う、という点を述べてきましたが、それ以外にも日本と大きく違う要素があります。
それは、フィリピン人の働き方・態度です。
これはもはや国民性であり、文化の違いとも言えます。
フィリピン人の勤務態度の常識を知らずに雇うと、管理の大変さに驚く日本人が多いです。
1. 家族が最優先
フィリピン人にとって、仕事は二の次どころか三の次か四の次くらいかもしれません。
日本人のように、人生において優先すべきことではないのです。
では、彼らは一体何を大事にしているのかというと、それは家族です。
家族を大事にする気持ちの強さは、日本人とはかけ離れたレベル。
「家族が熱を出したから今日は休みます」なんていうのは珍しいことではなく、むしろ彼らにとっては当たり前です。
日本で同じ理由で休んだら、ちょっと非常識な人になってしまうでしょう。
しかし、フィリピンでは逆に、家族をほったらかしにして仕事に行く方がよっぽど非常識なのです。
あなたがもしもフィリピン人を雇ったとしても、必ず家族の病気を理由に欠勤する従業員が出てくるでしょう。
フィリピンではそれが普通のことなのだ、と理解して上手に対処するしかありません。
2. おしゃべり、スマホ
フィリピンでコンビニなどのお店へ行くとびっくりすることがあります。
それは、従業員が平気で大声でおしゃべりし、スマホでビデオ通話までしているということ。
日本なら仕事中はスマホの電源を切っているか、手元に持っていないことも多いと思います。
しかしフィリピン人は、仕事をサボってSNSをやるなんていうのは、特に悪いこととも思ってないのです。
この点に関しては、あらかじめ雇用契約の中にスマホ禁止などの規定を入れておくと、トラブルを避けることが出来るでしょう。
日本人のように空気を読む文化などないので、とにかくはっきりと先に決めておくことが大事です。
3. 歌う&踊る!
フィリピンでは勤務中に突然歌ったり踊ったりする従業員が多いです。
彼らの中に流れるラテンの血が騒ぐのでしょうか(笑)
しかも、歌はプロ並みに上手いんです。
コンビニでもスーパーでも服屋でもレストランでも、歌っている従業員はよく見かけます。
特に悪いことではないと思うので、「そういう文化なんだな」と思って受け流しておくのが良いかもしれません。
せっかく上機嫌なのに、あまり規制をかけすぎてギスギスしてしまうのも考えものです。
4. 遅刻&欠勤
フィリピン人は、しょっちゅう休みます。
もちろん、当日になってからの連絡です。
だいたいは、家族の体調不良が理由か、無連絡のことも珍しくありません。
また、遅刻も大変多いです。
日本だったらとっくにクビになっていそうなくらい、平気で遅れてきます。
その理由は「道路が渋滞してた」「大雨で冠水してた」などなど、自分が悪いことはまずありません・・。
しかもフィリピンは実際に道路の渋滞がひどいので、嘘とも言い切れない。
ですので、欠勤や遅刻に関しても、あらかじめルールを設定しておくのが良いでしょう。
日本のように1回でも遅刻したら減給される、というのはちょっと厳しすぎるかもしれませんが、たとえば何回以上遅刻したらペナルティなど、何かしら用意しておくと注意しやすくなります。
<フィリピン人の能力>
ここまで来ると、なんだかフィリピン人と働くのって難しそう・・・と思うかもしれません。
しかし、フィリピン人には日本の常識は通用しなくても、日本人より有能な部分もたくさん持っています。
◆高い英語力
まず、フィリピン人が日本人よりも確実に優っているのは英語力です。
フィリピンは、世界でも英語人口が第3位。
小学校から英語で授業を受けているため、学校に行っている層はほぼ英語が話せます。
もちろん、ビジネスレベルです。
フィリピンで外資系企業がコールセンター事業などのBPO(ビジネスのアウトソース)を積極的に行っているのは、フィリピン人が高い英語力を持っているからなのです。
これはもちろん、日本人が現地でグローバルなビジネスをする際にも、強い武器となるでしょう。
◆ホスピタリティ&コミュニケーション能力
フィリピン人は、一見自分勝手にも見えますが、実は困っている人を助けたいというホスピタリティ精神はものすごく強いです。
人との繋がりや協力も大事にしますし、接客などでもすぐにお客さんと仲良くなるくらいコミュニケーションを取るのが上手。
(それですぐに手を止めておしゃべりに発展してしまうのですが・・。)
彼らからすると、日本人はかなりシャイで引っ込み思案に見えるようです。
◆素直さ
プライドが高いことで知られるフィリピン人ですが、ちゃんと個々で向き合って話すと、案外素直な面を持っています。
ある意味純粋というか、言えば分かりますし、理解したことはすぐに直せます。
そういった意味では、変に自信を持っている日本人よりも使いやすいかもしれません。
◆クリエイティブ
遊び心あふれるフィリピン人は、とってもクリエイティブな人種でもあります。
職場で何か足りないものがあっても、代用品を自分で作ってみたり、アイディアに行き詰っても別の方法を思いついたりする能力が高いのです。
アタマの固い日本人にはなかなか出てこない考えを持っていたりして、驚かされることもあります。
◆楽観的
日本人は真面目すぎるとよく言われますよね。
フィリピン人たちの生き方を見ていると、本当にその通りかもしれないと感じてしまいます。
基本的に”その日暮らし”でOKと思っている彼らは、ものすごく楽観的で、明日のことなど心配していません。
仕事のことを考えすぎて病むなんてことは、ありえないのです。
こういう明るくポジティブな人材が会社にいると、自ずとみんなが明るくなり、結果的に仕事が円滑に進むこともあります。
<フィリピン人の特質を活かそう!>
良くも悪くも日本人とは違う働き方をしているフィリピン人。
フィリピンでビジネスをする際には、ぜひ彼らの特質を活かせるよう考えてみてください。
上手に扱えば大変良い人材になります。
日系企業に雇われることは、フィリピン人にとっても誇れることなのです。
また、日本人が外国人を雇用する際にはさまざまな法令や規則がありますので、くれぐれも注意してください。