フィリピンの国鳥、絶滅危惧種フィリピンワシ
7,000以上もの島々と雄大な自然を持つフィリピンには、さまざまな野生動物たちが住んでいます。
中には絶滅危惧種に指定されているものもおり、「フィリピンワシ」もその1つです。
<フィリピンワシとは>
フィリピンワシは、世界最大級のワシで、翼を広げると2メートル近くにもなり、体重は4.7〜8キロほどもある大型の猛禽類です。
低地や小高い原生林などに生息しています。
しかし、その多くが今は森林伐採によって生きる場所を失い、世界自然保護連合(IUCN)から「近絶滅種」に指定されました。
メスが卵を産むのは2年に1度で、オスが狩りをし、メスが餌を与えます。
肉食のフィリピンワシのエサになるのは、他の鳥類、ヘビなどの爬虫類、ムササビ、コウモリ、パームシベット(ジャコウネコの仲間)、ヒヨケザル、リスなど様々な動物です。
ヒヨケザルを食糧にしていることから、「サルクイワシ」とも呼ばれます。
人目のつくところに現れるのは稀で、そのため調査が進んでいないと言われています。
フィリピンの国鳥であり、「鳥の王」の異名も持ちます。
その名にふさわしく、大きな翼を広げて力強く堂々と飛行する姿は圧巻で、たてがみを思わせる気品溢れる羽は、まさに王のようです。
ミンダナオ島では昔、フィリピンワシが「魔法使いの化身」と信じられ恐れられていたのだとか。
確かに、魔力を宿していそうな風貌ではあります。
日本のメディアでは「顔がイケメン」な鳥として話題になったこともあります。
<人間を襲う?>
フィリピンワシは肉食で大型の鳥なども捕食するため、「人間の子供を襲う」といった話もあるようです。
しかし実際に人間を襲うことはありません。
ただ、人間が飼っている家畜をエサにしてしまうことがあり、忌々しい存在とされていたこともありました。
<故マルコス大統領にも気に入られていた>
フィリピンで長年独裁政権を敷いていた故マルコス大統領は生前、大の狩猟好きとして知られていました。
自分の土地でシマウマやキリンなどの野生動物を飼育していたほどだとか。
そんな彼は、自国の国鳥が「サルクイワシ(Monkey-eating eagle)」と呼ばれていたことを、「気高いこの鳥にふさわしくない。国家の名誉を損なう。」として、「フィリピンイーグル」に改めるよう命じたそうです。
そのため、現在はサルクイワシと呼ばれることは少なくなったとのこと。
<フィリピンでの生息地>
フィリピンの固有種であるフィリピンワシですが、見つかっているのはルソン島、サマール島、レイテ島、ミンダナオ島の4つの島だけです。
7,000以上も島がある中で、たった4島なのは、生息地が消失しているからに他なりません。
もともとフィリピンにあった森林は、現在は25%以下にまで減少していると言われています。
フィリピンワシが子育てに使っている木も、その多くが違法伐採者たちによって失われていきました。
現在フィリピンでは、野外調査や飼育下の繁殖などのフィリピンワシ保護策が進められており、1羽殺すと懲役12年の刑が課されます。
人工授精による繁殖に成功していますが、個体数は依然として増えていません。
<野生のものを見つけるのは難しい>
あまりその姿を現さないフィリピンワシは、野生のものを調査するのが困難になっています。
フィリピンでも、研究が進んでいるのはミンダナオ島で飼育されているものか営巣地にいるものだけです。
1987年に飼育繁殖保護プログラムで設立された「フィリピンワシ募金」の研究によれば、現在生息していると推測されるフィリピンワシの個体数はつがい400組ほどということ。
<フィリピンワシが見られる唯一の場所>
フィリピンのミンダナオ島には、「フィリピン・イーグル・センター」という施設があり、ここでは観光客がフィリピンワシを見ることができます。
現在、一般人がフィリピンワシを見られるのは世界中でここだけです。
実はフィリピンワシは大昔に東京の上野動物園でも飼育されていたそうですが、当然現在は日本で見るのは不可能です。
施設内にはフィリピンワシの他に別の鳥やヘビやサルなどがいて、普通に動物園としても楽しめますが、フィリピンワシはやはりすごい迫力で一見の価値があります。
動物が好きな人や自然環境保護、野生動物保護などに興味がある人はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
この美しく気高い鳥が、少しでも個体数を増やして絶滅を免れるよう祈るばかりです。
フィリピン・イーグル・センターの場所:
Malagos, Baguio District, Davao City
ダバオ市内から車で1時間ほどでアクセスできます。
帰りに流しのタクシーは走っていないので、乗車の際に交渉して何時間か待機してもらいましょう。