ドゥテルテ大統領が人気の理由と今後のフィリピン
2016年の就任以来、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、多岐にわたる大胆な政策で国民および世界を驚かせてきました。
中でも、麻薬犯罪撲滅は数多くの死者を出しており、国の治安向上に貢献している一方で、罪のない人々も命を落としているとして人権団体などから強く批判されています。
また、南シナ海問題においては、領有権を争う海域の権益をまるで中国に譲るかのような態度を見せて国民を困惑させるなど、理解できない行動も多く、いい意味でも悪い意味でも話題に事欠きません。
そんなドゥテルテ大統領ですが、一定数の国民から支持され続けているのも事実です。
フィリピン紙のデイリー・インクワイアラーが6月に行なった調査によれば、ドゥテルテ大統領に対する国民の支持率と信頼度は、1月と比較してそれぞれ80%から88%に、82%から87%に上がったそうです。
世界的に見れば問題を解決するどころか生み出してすらいるように見える彼が、ここまでフィリピン国民に支持され、人気を博す理由は何なのでしょうか?
ドゥテルテ大統領が結果を出し続けている最たるもの、それは圧倒的なスピードの経済成長です。
かつては「アジアの病人」とまで呼ばれていたフィリピンは、今やインドや中国の経済をしのぐ勢いで成長しています。
今年の第2四半期の成長率は6.8%。
日本の2017年のGDP成長率が1.7%であったことを鑑みると、非常に高い数字であることがわかります。
ほとんどの国民にとって、麻薬撲滅戦争が過剰なものであることや外交においてリスクを犯していることはさほど問題ではなく、それよりも国の経済が回っていることを彼の功績として評価しているようです。
フィリピン経済は、国内での個人消費が大きいこと、そしてアジア太平洋地域の国々が成長してきたことからも、良い影響を受けています。
これらの国々へのフィリピンからの輸出量は、GDPの約3分の1を占める水準にまで増加しました。
ドゥテルテ大統領が指揮をとってからというもの、フィリピン経済は世界からも注目されるレベルへと発展しているのです。
しかしながら、今現在フィリピンは新しい問題を抱えています。
インフレ率の過剰な上昇です。
今年初めから上がり続けています。
6月の消費者物価指数(CPI)は5.2%で、インドや中国を大きく上回りました。
また、貿易赤字の問題も浮上しています。
今年4月には、15億5,000万ドルまで赤字が膨らみました。
激しいインフレ率の上昇と大きな貿易赤字。
これらは今後のフィリピンの経済成長に歯止めをかけてしまう懸念要素です。
対策として、フィリピン中央銀行は5月に政策金利の翌日物借入金利(RRP)を引き上げました。
2014年9月以降初めてのことです。
フィリピン中央銀行も、このままインフレ上昇を放置して経済成長をストップさせるわけにはいきません。
新興国の成長がストップしてしまう典型的な要因が、インフレ率の上昇です。
フィリピンは過去、1980年代にも一度62.8%という高いインフレ率を経験したのちに、経済が低迷しました。
もう二度と同じ状況は作りたくないと考えているはずです。
ドゥテルテ大統領は、現在の人気をキープしたまま、フィリピン経済をさらに発展させて行くことはできるのでしょうか。
彼が今後どんな手を打ってくるかは、フィリピン国民のみならず世界中が注目していることでしょう。