医療従事者のコロナ感染率が高いフィリピン
新型コロナウイルスの感染者が日々増加し続けているフィリピン。
どうやら感染者の”内訳”も問題なようで、医療従事者が15%を占めているそうです。
4月26日時点でのフィリピン国内の感染者は7,579人、死者は501人に上っていますが、そのうち1,000人以上の感染者が医療従事者となっており、25人以上が死亡しています。
■脆弱な医療体制
もともとフィリピンでは、脆弱な医療体制が問題視されていました。
人口1億人を超えているフィリピンですが、人口10万人あたりの病床数は101、医師の数は4万人で、これは日本のたった10分の1にすぎません。
ベッド数も医師数も少なく、今回のような大規模な感染症の流行時には対応できる体制が整っていなかったのです。
ドゥテルテ大統領が東南アジアの中でもいち早くロックダウンに踏み切ったのも、医療の崩壊を最初から危惧していたからだと言われています。
感染拡大を防止するため、現在ルソン島とセブ州では厳しい移動・外出制限が実施され、公共交通機関も動いておらず、人々は不要不急の外出ができません。
ルールを破って外に出れば逮捕されるほど、厳重に管理されている状況です。
しかし、そういった必死の隔離措置にも関わらず、感染者の数は増加の一途を辿るばかりです。
マカティなど首都マニラの大都市部でも、大型の病院が次々と満床を発表しており、地方ではすでに医療崩壊も起こり始めています。
もし体調が悪くなっても病院はパンク状態ですぐに診てもらえないため、結果的に周囲に感染を拡大させてしまう原因にもなっています。
■世界でも突出して高い医療従事者の感染率
世界にはフィリピンよりもずっと感染者の多い国もあります。
たとえばアメリカでは95万人、スペインでは22万人、イタリアは19万人となっていて、これらの国々と比較すれば、まだ東南アジアはかなり少ない方だと言えます。
しかし、医療従事者の感染率で見てみると、15%というのは、爆発的感染が起こっているスペインの16%と同じレベルです。
WHOによれば、世界全体の感染者では医療従事者の割合は2.3%なのに対し、フィリピンの数字は異常に高いのだそう。
■なぜ医療従事者の感染率が高いのか?
世界的に見て、なぜフィリピンの新型コロナウイルス感染者は医療従事者の割合が高いのでしょうか?
フィリピン私立病院協会はこれについて、
・旅行歴や症状を申告しない来院者がいた
・医療従事者を守る装備(防護服など)が不足している
といった要因を挙げています。
次から次へと患者が運ばれてくるにも関わらず、医師たちは自分たちの身を守る防具を十分に与えられていないのです。
また、もともと医師の数が少ないため、多くのコロナ患者が限られた医師のもとへ集まってしまったことも要因の1つです。
■重症者用の施設が足りない
感染者を隔離するための施設も足りないため、今月マニラ首都圏では国際展示場など6箇所の公共施設を臨時病棟として設備しました。
しかしそれでも、医師はもちろん、防護服、手術用マスク、そして死体袋などの備品が足りないそうです。
臨時病棟は、症状が軽い人もしくは無症状の人を隔離する目的となっていますが、重症患者を受け入れるための態勢はすでに限界に近づいています。
Lung Center of the Philippinesのフランシスコ医師によれば、今後2ヶ月以上患者が増加すれば、許容量を超えてしまうそう。
増加に歯止めがかからない新型コロナウイルス感染。
フィリピン政府は更なる拡大を防ぐため、「強化されたコミュニティ隔離措置」を5月15日まで延長することを決定しました。
しかし、これまでの隔離措置でも、それほど大きな効力を発揮しているのかどうか分かりません。
人々の移動や外出を制限することで、少しでも感染者が減ることを願うばかりです。