ドゥテルテ大統領から国民へ「みんなで感染を阻止しよう」
フィリピンでマニラ首都圏を含むルソン島全域がロックダウンされてから、1ヶ月が経ちました。
4月14日時点の新型コロナウイルス感染者は5,223人、死者は335人と現在も増えている状況ではありますが、増加ペースは少しずつ落ちてきています。
厳しい外出禁止令による封じ込めも、徐々に効果を現し始めているのかもしれません。
■ドゥテルテ大統領の強いメッセージ
ドゥテルテ大統領は、「すべての市民は自宅待機しなければならない。ビーチや海で遊ぶことも禁止だ。みんなの協力で新型コロナウイルスの感染を阻止しよう」と国民を励ました上で、「ビーチや海で遊ぶ人に警告する。刑務所に収監するぞ」とも呼びかけました。
先日フィリピンの北スリガオ州では、サーフィンをしていた50代の日本人男性が警察に連行された事件がありました。
現在フィリピンでは、不要不急の外出はできません。
食料品や薬など生活必需品の買い出しには、1家庭につき1人だけが出かけることができますが、それ以外で外に出ると軍や警察に捕まります。
違反を防ぐため、ドゥテルテ大統領は「違反し、軍や警察に抵抗する者は射殺しても良い」と発言。
麻薬戦争時と同様に世界中で物議を醸しましたが、ほとんどの国民は、自分たちを感染から守るためだと理解しているようです。
フィリピンではすでに多くの地域で医療崩壊も起きており、一人でも感染者を増やさないことが何よりも大事な状況です。
ドゥテルテ大統領は、「射殺OK」という分かりやすいメッセージで、その重要性を国民に訴えました。
実際に警察官に反抗して刃物を振り回した男性が射殺されてしまった事件もありましたが、その際も、「これらの規制なしで新型コロナウイルスが終息することはない。皆さんがこれに従いたくないのであれば、私は罪のないこれからも生き続けたい人たちの命を守るために、あなたの命を終わらせるだろう。」とコメントしています。
外に出られないストレスを抱えつつも、ほとんどの市民は素直に政府の指示に従い、家から出ずに状況が良くなることを待っています。
この他ドゥテルテ大統領は、生活に困窮している労働者たちへは6,000ペソ(約12,000円)を支給するほか、政府関係者保険機関を通して20,000ペソ(約42,000円)の緊急融資も行うことを発表しました。
■日本のNPO法人も支援へ
政府だけでなく、各種団体が新型コロナウイルスの危機から国民を救おうと動いています。
認定NPO法人の「アイキャン」(愛知県名古屋市)は、フィリピンのロックダウンによって職を失い収入がなくなってしまったストリートチルドレンや、ごみ山付近で生活する人々のために、緊急物資を配給するそうです。
リサイクルごみを売ったり物乞いをしたりして生活しているスラムの人々は、不衛生な環境に住んでいるため新型コロナウイルスの感染リスクが高いだけでなく、その日家族が食べるものもないような厳しい経済状況に置かれています。
このままでは、新型コロナウイルスに感染しなくとも、飢え死にしてしまうかもしれません。
自治体による食糧の配給も行われてはいますが、その量は決して十分ではないのです。
現在アイキャンでは、物資を届けるための支援を募集しているとのこと。
■ドゥテルテ大統領への信頼
もともと医療体制が脆弱だったこともあり、依然として医療現場は危機的状況にあるフィリピンですが、政府や各種団体、そして国民の結束力はとても固いように見えます。
ドゥテルテ大統領がリーダーでなければ、フィリピンはもっと悲惨な状態になっていたかもしれません。
ウイルス感染による患者や死者が増えるだけでなく、市民の抗議デモや経済へのダメージ、そして貧困問題にも目を向けなければならないストレスは、私たちには想像し難いものであると思います。
自身や議員の給与もカットすることを決め、国民からの信頼はますます高まっているようです。
ルソン島のロックダウンは4月30日まで続く予定となっていますが、今後状況はどのように推移していくのでしょうか。
場合によっては更なる延長もありえるでしょう。
フィリピン国民はもちろん、在住している日本人も、今は彼を信じるしかありません。
大統領自身の健康も守りつつ、なんとか事態が収束へ向かってくれればと願うばかりです。