フィリピンのゴミ山とスラム街
日本は世界的に見てもゴミの分別や処理がかなり進んでいるってご存知ですか?
発展途上国へ旅行に行くと、そこらじゅうゴミだらけで場所によっては悪臭も漂っていたりして本当に汚いんです。
フィリピンも経済が発展し、だんだんと街はクリーンになってきてはいるものの、まだまだゴミ処理に関しては改善の余地がある状態です。
<分別はあって無いようなもの>
フィリピンでは、ゴミの分別は一応2種類になっていて、それは「リサイクル可能なゴミ」と「リサイクル不可能なゴミ」。
綺麗なプラスチックはリサイクルできるゴミとして、分けて出すように指示はされています。
しかしながら、実際のところは人々は2種類のゴミをごちゃごちゃに混ぜて出しており、分別の習慣がまったく行き渡っていないようなのです。
袋の中身は、プラスチックも生ゴミも全部一緒。
道路に平気でゴミを捨ててしまうくらいなので、そもそも分別しなければなどという意識がないのかもしれません・・・。
<ゴミはどこに運ばれるか?>
フィリピンではゴミの収集は週に1回のみです。
日本のように、分別されていないからと言って持って行ってくれない、ということはありません。
しかし、生ゴミもプラスチックもごちゃごちゃになったゴミは、焼却するとダイオキシンなどの有害物質が発生することから、燃やすことができません。
では、一体どこへ行くのでしょう?
それが、時折日本のメディアでも取り上げられる「ゴミ山」です。
収集されても、ただ集積場に山のように積まれていくだけなのです。
<スカベンジャーが群がるゴミ山>
フィリピンの貧困層の中でも特に底辺の人々は、ゴミ山からゴミを拾い、それをジャンクショップに売って生活の糧にしており、「スカベンジャー」と呼ばれています。
プラスチックや金属、ペットボトル、ガラスなど、生ゴミ以外のものはすべて売り物になり得るため、スカベンジャーにとってゴミ山はなくてはならないものです。
しかしゴミ山は、悪臭を放ち、有毒なガスを発生させ、時に大きな火事にも至るという危険な場所であるだけでなく、環境にも大きな悪影響を及ぼします。
非常に衛生状態が悪いため、スカベンジャーたちの健康にも被害が出ます。
ですので、フィリピン政府としては早くゴミ山を無くしたいと考えているようですが、ゴミ山がなくなればスカベンジャーの人たちは生きていく術を失います。
政府は彼らに別の仕事与えて自立させるような対策は持っていませんので、現状として、どうしたらいいのか分からないのです。
フィリピンのゴミ山は、首都マニラをはじめ、セブにも大きいものが2つあります。
<スモーキーマウンテン>
日本のメディアでも度々取り上げられている「スモーキーマウンテン」は、マニラ北部のトンド地区にあるスラム街。
広さは29ヘクタールもあり、東洋最大と言われています。
ここにあったゴミ山が自然発火し、煙があがっていることからこの名前が付きました。
1954年からゴミの投棄場となったこの場所は、マニラ市内から出る大量のゴミが運ばれ続けて高さ30メートルもの山となり、スカベンジャーたちが住み着くようになりました。
ただ、そのような巨大がスラム街があればフィリピンのイメージ悪化につながると考え、フィリピン政府は1980年以降に閉鎖を試みます。
その際住民との激しい闘争が行われ、スカベンジャーの人たちには公共住宅が与えられましたが、一部はほかのゴミ山へ移り住み、今もスカベンジャー生活を続けているということです。
<ゴミ山閉鎖へ向けての動き>
現在、フィリピンではこのようなゴミ問題やスラム街の解消へ向けて、対策を練っている模様です。
まず、政府が管理しているゴミ山は、スカベンジャー立ち入り禁止。
すでに住んでいる人々も早く移住するように言われています。
また、フィリピンには個人や企業が運営しているゴミ山も存在していますが、それらも2020年までには閉鎖され、ゆくゆくはその場所にショッピングモールやコンドミニアムなどが建つ予定になっているようです。
<ゴミ山閉鎖がスラムの解消にはならない>
ただ、ゴミ山がなくなっても、スカベンジャーたちに新しい仕事が与えられるわけではありません。
ゴミ拾いの仕事がなくなってしまうことで、逆に犯罪率を上げてしまう可能性も懸念されています。
ただゴミ山を無くしスカベンジャーを移動させるだけでは、根本的な解決にはならず、結局はスラム街もなくならないのです。
何しろスカベンジャーたちは普通の仕事に就けるほど教育も受けていませんし、雇ってくれるところなんてどこにも無いからです。
<教育が根本的な問題解決策では?>
ゴミの分別にしても、スラムの解消にしても、まずは教育が万人に行き渡るような社会システムへ変えていく必要があるのではないかと思います。
スラム街にはゴミ収集場もなければ、家の中にゴミ箱もないのだそう。
”ゴミはゴミ箱に捨てる”という概念すら持っておらず、子供達は平気で道端にゴミをポイ捨てし、それが当たり前になっています。
溜まったゴミはやがて海や川に捨てられ、環境や自然を破壊します。
そしてその川や海の水を使って生活する貧困層の人々は、結局は自分たちの健康を自分たちで害することになってしまうのです。
自分がゴミを道端にポイ捨てすることよって環境にどんな変化があるか?なんて、知らないし考えもしないスラムの子供達に、まず基本的な教育を受けさせてあげることが何よりも急務かと思います。
そして、政府もただ住む場所を提供するだけでなく、彼らが自分たちの力で生活出来るような仕事を与えなければ、また同じことを繰り返すだけになるでしょう。
<リゾートイメージのフィリピンだけど・・・>
一般的にフィリピンといえば、今は観光地や留学先としてのイメージが強くなってきているのではないかと思います。
特にセブは、旅行代理店のパンフレットに載っているような美しい海やリゾートのイメージでしょう。
しかし、綺麗で整備された場所は、フィリピンの中では実はまだまだほんの一部です。
リゾートアイランドとして知られるセブにも、ちょっと観光地を外れれば、ボロボロの掘っ建て小屋で暮らす貧困層の人々や、ゴミ山で生活するスカベンジャーたちが普通にいるんです。
そこは、私たち日本人には、なかなか想像もつかないような酷い環境です。
<何ができるか?>
私たち日本人がフィリピンのゴミ問題やスラム街解消に向けて出来ることは何か?
はっきり言うと、フィリピンの行政に口を出せるわけでもないので、大きなことは何もできないかもしれません。
しかし、やはり道端にゴミを捨てないようにする、環境が汚れないように配慮して滞在する、分別に協力するなどの意識は大事ではないかと思います。
また、もし本気でフィリピンの貧困層を救い、環境を改善したいなら、ボランティア活動に参加することも出来るでしょう。
<まずは自分の身を守るのが最優先!>
日本人の中には、興味本位でゴミ山やスラム街へ近づこうとする人もいるようですが、できれば避けた方が良いです。
スラム街での犯罪は私たちが想像する以上に多く、治安は最悪レベルです。
また、現在ゴミ山は閉鎖されており、一般の人が入ることはできません。
スモーキーマウンテンにも現在は「ゴミ山」はなくなり、何か目的があって入りたくても、関所があるのでそこで許可を得る必要があります。
また、フィリピンではスラムやゴミ山まで行かなくとも、貧困層の人たちと遭遇する機会は少なからずあります。
なぜならこの国の人口の8割が貧困層に属しているからです。
綺麗な服に身を包み、ショッピングモールで買い物をしているフィリピン人は、ほんの一握りの富裕層なのです。
旅行や留学で訪れる際には、ストリートチルドレンやスリなどに気をつけ、まず自分の身をしっかり守ることを最優先しましょう。