フィリピンの刑務所での死亡者は毎年5,200人
フィリピンではドゥテルテ大統領が進める麻薬戦争により、2016年から多数の麻薬関連犯罪容疑者が逮捕されています。
その中で問題の1つとなっているのが、過密状態の刑務所です。
収容人数をはるかに超えた数の人々が詰め込まれ、衛生状態は最悪、感染症や暴力が発生して毎年多くの服役者が亡くなっているのだそう。
■死亡者数は年5,200人
地元メディアのCNNフィリピンによれば、マニラ近郊のニュービリビッド国立刑務所では、毎年5人に1人、年約5,200人もの服役者が死亡しているとのこと。
原因は、過密状態による病気の蔓延や暴力。
特に病気に関しては深刻化しており、肺結核の感染を阻止できないと言います。
また、受刑者同士が性行為に及び、HIVの蔓延も深刻化しています。
■フィリピン全国の刑務所が超過密状態
詰め込み過ぎによる死亡者は、ニュービリビッド国立刑務所以外の刑務所でも増加しています。
特にケソン市にある刑務所はひどく、4,000人が収容されており、本来30人しか入れない監房に131人が押し込まれているそう。
もちろん寝る場所もなく、受刑者たちはみんな体がくっつき合っている状態で生活しています。
ここの受刑者数は2016年のドゥテルテ大統領が就任する前までは3,600人ほどでしたが、就任後のはわずか7週間で4,000人を超えました。
現在フィリピン全体での受刑者数は、公判前の拘束者も含めて18万8,278人に及んでいます。
また、刑務所の過密度に関しては、タガログのカラバルソンにある刑務所が収容率975%、ルソンの刑務所が802%、サンボアガ半島の刑務所が789%という数字が割り出されています。
全国の刑務所482ヶ所の定員合計は20,653人ですが、服役囚は126,302人に上っているということです。
これは、ハイチの刑務所に次いで世界で2番目に劣悪な環境だと言われています。
なお、フィリピンの刑務所に入っている受刑者の7割が麻薬関連の犯罪容疑者だそうです。
■汚職も問題に
フィリピンの刑務所で問題となっているのは、過密状態だけではありません。
受刑者が刑務官に賄賂を支払い、携帯電話やタバコ、アルコール、果てはVIP待遇の個室まで手に入れている状況も明らかになっています。
今年の4月に行われた抜き打ち検査では、携帯電話300台、タバコ600本、そして大量の武器が押収され、見せしめのためにブルドーザーで踏み潰し処分する様子が公開されました。
武器には殺傷能力が高いものも多く、刑務所内での傷害事件などに使われていたと見られています。
また、携帯電話やタバコなどの多くは、面会に来た家族や友人がこっそり渡していたものだそう。
■刑務官の不満や懸念も
このような状態では、受刑者は十分に更生できないという刑務官からの不満の声もあがっています。
更生できなかった受刑者はまた外で犯罪を繰り返し、刑務所へ戻ってきます。
また、受刑者はみんな蒸し暑く不快な環境で何にも集中できず、怒りっぽくなっていると言います。
さらに、刑務官不足も深刻化。
通常は受刑者7人に対し1人の刑務官を配置するものだそうですが、当然ながら十分な人手がなく、監視が行き届かない状況となっています。
その結果、フィリピンの刑務所では受刑者が他の受刑者を統制するような社会まで出来上がっています。
■本当の意味での平和な社会はこれから
ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅政策により、確かに街からは麻薬犯罪者が減ったかもしれません。
しかし、あまりにもその副産物が多すぎるようにも思います。
これでフィリピン社会が本当に良くなっているのかは分かりません。
汚職や賄賂も相変わらず横行しているとのこと。
本当の意味でフィリピンから犯罪を減らし、人々に健全な生活をさせるには、まだまだ解決しなければならない問題が山積みです。