フィリピンで離婚は合法化されるのか?
フィリピンは東南アジア唯一のキリスト教国家であり、”離婚できない国”でもあります。
世界で離婚が違法とされているのは、バチカン市国とフィリピンだけ。
一度婚姻関係を結べば、死ぬまでパートナーと夫婦でいなければならないのです。
■離婚できない理由
キリスト教徒が国民の80%以上を占めているフィリピン。
敬虔な教徒も多く、生活の中で宗教は非常に大切なものだと考えています。
さらに、有権者の10人に4人が、候補者の所属する宗教によって投票先を決めるのだそう。
そんなフィリピンでは教会の影響力も強く、聖書に書かれているように、離婚、同性婚、そして妊娠中絶には反対する声が圧倒的なのです。
政府も長年に渡って受け継がれてきたルールを簡単に覆すことは出来ないのでしょう。
■”結婚無効化”は可能
離婚は法律上できませんが、”結婚無効化”の手続きは可能です。
これは「アナルメント」と呼ばれているもので、「裁判官がその結婚が不当で初めから存在していないと判定した場合、婚姻を解消できる」という制度となっています。
しかし、アナルメントを行うには長い時間と30万〜100万ペソ(63万〜216万円)という莫大な費用がかかります。
63万円といえば、中流階級のフィリピン人の年収と同じくらいです。
そのため、この手続きを選ぶ人はそう多くはありません。
ただ、共同生活をさせて、別々の人生を歩むことは可能です。
フィリピンには、このスタイルで、法律上は配偶者がいながらも、別の人と一緒になるという人がごまんといます。
しかし、たとえ法律上の配偶者と一生会うことがないとしても、同じ姓を名乗り続けなければなりませんし、財産分与はできないため、話し合って決めるしかありません。
■実質婚も多い
一度結婚したら一生離婚できない、というリスクを避けるため、”実質婚”の形態を選ぶ人たちも大勢います。
普通の夫婦と同じように一緒に暮らし、子供も作り、家庭生活を営みながらも、婚姻関係は持たない、というスタイルです。
日本でいう「内縁関係」に似たようなものですね。
ただ、恋愛にものすごく情熱的なフィリピン人は、「この人と別れるわけがない!」と信じて、結婚に踏み切ってしまう人も多いようです。
最初から離婚前提で結婚する人なんていないので、当たり前といえば当たり前ですが・・。
■離婚合法化を望む国民
婚姻関係を結んだまま同居を解消したり、実質婚をしたりと、フィリピンでは離婚できないがために複雑な夫婦関係を築いている人たちがたくさんいますが、国民としては離婚の合法化を望む人が多いようです。
2017年の世論調査では、半数以上が離婚を合法化すべきと答えたとのこと。
離婚ができないせいで、配偶者からの暴力に苦しむ女性も4分1ほどいます。
また、近年はカトリック教会の影響力も弱まってきており、毎週教会を訪れる人は、1991年には66%いたのが、2017年には46%まで落ちました。
フィリピン人にとっての宗教の重要度は、少しずつ薄れていっているのかもしれません。
■離婚合法化の動きもある
そんなフィリピンでは最近、離婚を合法化する動きも出てきているようです。
フィリピンの下院委員会は2月5日に、離婚を合法化する3つの法案を承認したそう。
ドゥテルテ大統領も、実は離婚合法化に非常に積極的です。
彼は子供の頃に司祭からわいせつ行為を受けた経験があるらしく、神やら教会やらに罵声を浴びせるほど。
これから専門家たちによって会議が行われ、再び審議されるとのことですが、長年人々を縛り付けてきた離婚禁止が解消される日も、そう遠くないかもしれません。