フィリピン人の470万人がトイレなしで生活している現状
経済が発展し、都市化が進むマニラやセブの街を見ていると、フィリピンが発展途上国から抜け出す日もそう遠くないと感じるかもしれません。
しかし、社会格差の大きなこの国には、衛生的なトイレなしに暮らしている国民が4.5%もいるというデータがあります。
4.5%というと、ざっと470万人ほど。
470万人もの国民が、なんと屋外で排泄しているのだそうです。
実はまだまだ衛生設備が整っていない場所は多く、24%の国民は劣悪な衛生環境で暮らしていると言います。
■屋外で排泄するとどうなるか
幼い頃からトイレではなく屋外で排泄している子供たちは、発育阻害、慢性的な栄養不良、そして身体的・認知的損傷を受けるそうです。
また、屋外での排泄行為は自然環境や教育、生産性に対しても脅威になると言われているほか、女性が外で排泄している地域では、性暴力のリスクも高まると言われています。
排泄物はそのまま川や海へも流出し、綺麗な水の供給もできなくなります。
そしてその汚水によって、病気になり子供のうちに死んでしまうのです。
現在、全世界で衛生的なトイレを利用できる人は人口の68%、残りの34%は不衛生な環境でトイレなしの生活をしています。
■衛生に関する教育不足
貧しい地域の子供達は、学校で衛生の大切さについて学ぶ機会もありません。
糞尿によってどのような感染症のリスクがあるか、除菌がどれだけ病気を防いでくれるかなども、何も知らないのです。
そのため、その辺の草むらで排泄し、もちろん手を洗うこともないまま、食事をすることもあるでしょう。
しかし実は、フィリピンに蔓延している感染症は、衛生的なトイレを使用して石鹸で手洗いするだけで、ほとんどが防げると言われています。
■保健省の取り組み
このような状況を受けて、フィリピンの保健省はマニラ市トンド地区バセコの貧困地域で「持続可能な公衆衛生のためのフィリピンアプローチ」という事業を立ち上げました。
トンド地区といえば、ゴミ山「スモーキー・マウンテン」があったことでも知られる、有名なスラム街です。
この事業によって、2025年までに、フィリピンにおける屋外での排泄行為をゼロにするのが目標です。
■日本人がフィリピンでトイレを使う際には
トイレがない、あっても不衛生・・・そんなフィリピンを旅行するとなると、日本人としてはちょっと不安になってしまうかもしれません。
確かに日本のトイレは世界最高レベルに清潔で美しいと言われていますので、フィリピンのトイレを初めて見た時にはいろんな意味でショックを受けるでしょう。
ただ観光地には、トイレがないということはほぼ無いですので、屋外で用を足すようなことは起こりません。
ショッピングモールやホテルのトイレは比較的綺麗で、衛生レベルもそこまで心配する必要はないでしょう。
しかし、トイレットペーパーを流すことはどこも出来ませんので覚えておいてください。
フィリピンのトイレは配管が細く、水洗であっても紙を流すと詰まってしまいます。
使った紙は、近くにあるゴミ箱にそのまま捨てるスタイルです。
そして、よく遭遇するのが便座のないトイレです。
すぐ壊れてしまうのか、はたまた盗まれるのか、よく分かりませんが、便座がないので座れません。
便器に直接お尻をつけても構わない、という人もいるかもしれませんが、大抵は汚れていて不衛生なので、先に除菌しないと膀胱炎などの病気にかかる可能性があります。
便座のないトイレでは、便座の上に靴ごと乗ってしゃがむ、というスタイルが一般的です。
バランスを崩して便器の中に足が入りそうになるので、くれぐれも注意してください。
それもちょっと厳しいという方は、空気イス状態でお尻を浮かせて用を足すしかありません。
その他、見るからに汚くて使用を諦めようと思ってしまうトイレも、フィリピンにはよくあります。
いずれにしても、除菌クリーナーとティッシュは絶対に持ち歩き、適宜掃除しながら使用しましょう。
そしてもちろん、使用後には手を石鹸で洗い、アルコールで除菌するのをお忘れなく。
フィリピンには今はトイレ自体がない人たちもいるくらいなので、衛生的で日本並みに美しいトイレが浸透するのは、まだまだ先になりそうです。