フィリピン、アフリカ豚コレラ予防対策でEU諸国からの豚を禁輸
フィリピンは現在、ヨーロッパの下記の国からの豚肉の輸入を禁じています。
・ベルギー
・ブルガリア
・チェコ
・ドイツ
・ハンガリー
・ラトビア
・ポーランド
・ルーマニア
理由は、「豚コレラ」です。
WHO(世界保健機関)は11月7〜8日に衛生植物検疫措置に関する委員会を開催し、フィリピンのこの禁輸措置が不当であると主張しました。
■豚コレラとは?
豚コレラ(別名CSF)は、豚やイノシシに感染する病気です。
高い伝染力を持ち、感染すると高確率でその個体は死亡します。
感染した個体の唾液や涙、排泄された糞尿にウイルスが排泄されており、別の個体へうつりますが、治療法は今のところありません。
家畜伝染病予防法において、家畜伝染病に指定されています。
世界各国で発症例がありますが、北米、オーストラリア、スウェーデンなどでは清浄化されています。
豚コレラ(CSF)は、豚やイノシシなどにのみ感染する病気であり、人にうつることはありません。
感染した豚やイノシシを摂取したことにより感染した例は、これまでに報告されていないとのこと。
また、日本では検査を徹底しており、合格したものでないと肉も内臓も流通していません。
■豚コレラの影響
人には感染せずとも、豚がかかれば高い致死率であるため、畜産農家では飼育衛生管理の徹底が重要になります。
当然ですが、大量の豚が死んでしまえば食肉業界にも大打撃となり、経済にも大きな影響を与えます。
■フィリピンで見つかった豚コレラ
フィリピンで豚コレラを非常に警戒している理由は、2019年9月に「アフリカ豚コレラ」の感染が国内で初めて見つかったからです。
感染が確認されたのは全てルソン島で、特にブラカン州とパンパンガ州に感染が拡大しているとのこと。
10月12日までに1万2,000頭の豚が感染しているのが確認されました。
国内の総供給量の0.029%に当たる頭数です。
国内での移動は制限されており、ビサヤ地方やミンダナオ地方へはルソン島から豚肉を流入させない措置をとっています。
この影響で、ハム、ベーコン、ソーセージなどの豚肉加工製品の売り上げが年間400億ペソ(約840億円)減少すると予想されています。
フィリピン全国の市場規模の35%〜40%を占める数字です。
ただ、「アフリカ豚コレラ(ASF)」と、上記で説明している「豚コレラ(CSF)」は、実はまったく別の病気。
アフリカ豚コレラ(ASF)も豚やイノシシに感染する伝染病ですが、発熱や全身の出血性病変を特徴とします。
主にダニなどによって媒介され、アフリカ、ロシア、アジアで発生が確認されています。
CFSと同様ASFも、人に感染することはありません。
■EU諸国の豚肉は本当に危険?
EUとしては、これまでにアフリカ豚コレラが発生したことがないドイツや、18ヶ月以上発生していないチェコからも豚肉の輸入を禁止しているのは不当だとしています。
これに対しフィリピン政府は、アフリカ豚コレラに関する科学的な資料や国際獣疫事務局の発表資料に基づいて検証した結果だとして、禁輸措置は正当なものだと反論。
ドイツからの豚肉に関しては、アフリカ豚コレラが現在も発生しているポーランドの豚と一緒の船で運ばれていることを理由に禁輸していると説明しました。
ドイツ側もこれに関しては非を認めているということです。
■日本は大丈夫?
人には感染しないため私たちへの健康被害を心配する必要はなさそうですが、豚が大量に死んでしまうことでフィリピン経済に多大な影響を及ぼすことは避けられません。
まだ感染が確認されていない国からも輸入を禁じているところを見ると、フィリピン政府の警戒はかなり強いものと思われます。
なお、日本では2018年9月に岐阜県で「豚コレラ(CFS)」の感染が見つかり、すでに10,658頭を殺処分しているそう。
ウイルスは何らかのルートを経由して、中国などの海外から日本へ入ってきているとされています。
養豚場としては、自分たちが育てた豚たちを殺さなければならないだけでなく、収入もストップしてしまうという死活問題に悩まされています。
「アフリカ豚コレラ(AFS)」はこれまでのところ確認されておらず、政府は水際対策に尽力している状況です。