麻薬戦争があっても高い支持率のドゥテルテ大統領
”麻薬戦争”によって5,000人以上もの人々がフィリピンの警察に殺害されていることは、日々メディアを通じてご存知の方も多いでしょう。
ドゥテルテ大統領は「麻薬犯罪に関わる者は、裁判にかけずに殺して良い」とし、密売などの疑いがかけられた人たちは有無を言わさず殺されてきました。
しかし、中には無実の人や関係のない貧困層の人々も殺されていると言われており、その”超法規的殺人”は、人権団体や地元のメディアから強く批判されています。
世界からも「非人道的だ」「人権侵害だ」と糾弾され、恐怖で国民を操作しようとしている独裁者だと批判する声もあります。
しかし一方で、フィリピン国内においてはドゥテルテ大統領の支持率は相変わらず高い数字をキープしています。
大統領に就任した2016年の7月は91%、9〜10月は86%、12月は83%と緩やかに降下してはいるものの、今年3月のフィリピンの世論調査でも、79%という依然として驚くほど高い数字を叩き出しています。
(※ちなみに日本の安倍首相は今年10月の数字が44.2%。ドゥテルテ大統領がどれだけすごいかわかりますね!)
世界からの悪評価とは裏腹に、国内では彼はカリスマ的人気を得ているのです。
■なぜ支持率が高いのか?
罪のない人まで殺され、恐怖で国民をコントロールしようとしているとまで言われているドゥテルテ大統領。
ここまで支持される理由とは一体何なのでしょうか?
■治安の改善を感じているフィリピン国民
マニラは世界的に見ても治安の悪い都市として知られており、地元住民ですらも普段から強盗やレイプなどの凶悪犯罪に怯えながら暮らしていました。
女性が1人で夜歩くことはできないし、殺人だってそこらじゅうで起こっていたのです。
それは、やはりドラッグの使用や密売が横行していたからです。
しかし、ドゥテルテ大統領が麻薬撲滅キャンペーンを始めてからは、明らかに治安が良くなりました。
地元住民はそれを肌で感じているそう。
「麻薬中毒者がいなくなって、強盗被害を聞かなくなった」
「麻薬犯罪者が殺人・レイプを起こしているのだから、彼らを野放しにする方がよっぽど多くの人の人権を侵害する行為になる」
「犯罪に怯える市民の人権はどうなるんだ、というのが住民の考え」
「今まであらゆる政治家が麻薬や貧困をなくすと言っていたが何も変わらなかった。ドゥテルテなら出来る」
といった声が多く、メディアが報道している内容と、国民の所感とでは、実は大きな差があるようです。
超法規的殺人が良いと言っているわけではないですが、今のフィリピンを根っこから安全な国へ変えていくには、麻薬戦争のような過激な政策も必要だと考えている人が大多数なのです。
■反ドゥテルテ派に牛耳られているフィリピンのメディア
フィリピン国民がドゥテルテ大統領を支持する一方で、フィリピンのメディアは彼の政策に批判的です。
裏にはメディアと政党の絡みもあります。
フィリピンメディアの大元をコントロールしているのは「ロペス財閥」。
フィリピン最大のテレビ放送局ABS-CBN、ケーブルテレビのスカイ・ビジョン、通信会社のバヤン・テレコミュニケーションズのほか、多数のラジオ局や新聞社、出版社もロペス財閥が大元です。
このロペス財閥は、反ドゥテルテ派である自由党と繋がっており、出来るだけドゥテルテ大統領を失脚させる方向へ持って行こうとしているのです。
「ドゥテルテ大統領の政策はこんなに人を殺している!超法規的殺人だ!罪のない人まで死んでいる!非人道的だ!」と、いかに彼が間違っているかをメディアを通じて主張しようとしています。
麻薬戦争の報道に関しても、死者数などに関して多少誇張が入っていると言われています。
日本に入ってくるフィリピンのニュースも、多くは現地マスメディアがソースなので、ドゥテルテ大統領の麻薬戦争に対して批判的に書かれています。
しかし、どれだけメディアがドゥテルテ批判をしても、フィリピン国民が彼への支持を変えないところ見れば、本当に街が平和になっていることを感じているのでしょう。
そして、これからも麻薬だけでなく政治汚職など、長年フィリピンに蔓延ってきた膿を出し、ダバオの時のように安心して暮らせる生活を提供してくれると期待しているのです。
■「麻薬犯罪者は誰でも殺していい」なんて言っていない
ドゥテルテ大統領を批判するテレビなどのメディアとは裏腹に、インターネット上では彼を擁護する人々の動きも見られます。
麻薬戦争によって殺された人たちや容疑者、そして自首した人々の本当の数を示し、それがマスメディアの発表している数字とは明らかに違うことを主張。
「ドゥテルテ大統領は決して誰彼構わず殺して良いと言っているわけではない」と、彼の政策の正当性を説明している動画も配信されています。
事実ドゥテルテ大統領は2016年8月の演説でも、「もしあなたの命が危険にさらされていないのならば、殺してはいけません。しかし、もしも容疑者が暴力的に抵抗し、あなたの命が危険にさらされるのならば、撃ちなさい」と語っていました。
マスメディアではこういったドゥテルテ大統領の発言を、批判しやすいように切り取って改ざんし、ミスリードを図っていると言われています。
■警察の間に蔓延する麻薬
フィリピンでは警察ですらも麻薬の使用や密売に関わっている人が多いと言われています。
捜査の途中で麻薬を手に入れ、それを売ってお金にしている警察官がいるのです。
これはもちろん犯罪ですし、麻薬戦争が始まった今は警察官でさえも殺人対象になり得ます。
そのため、警察官は自分と関わった容疑者を、自分の犯罪をバラされる前に殺す、という行為も行っていると言われています。
こういった”口封じ”のために有無を言わさず殺されている人も麻薬戦争で死んだ人としてカウントされてしまい、メディアで報道されているのです。
しかし、当然このような殺害はドゥテルテ大統領の指示ではありません。
メディアが勝手に政策の一部だとでっち上げているのです。
■ドゥテルテ大統領は正義のヒーロー?
誰の言っていることが一番正しいのか?
それは一概に言えることではありませんが、やはり国民が明らかに平和になったと感じているということは、麻薬戦争にある程度の効果があったと言えるのではないでしょうか。
もちろん、警察官の間に蔓延する麻薬密売や汚職など、まだまだ解決できていない問題は山ほどあります。
しかしドゥテルテ大統領は、政界や軍にはびこる麻薬犯罪容疑者でさえも容赦無く暴いていっています。
麻薬犯罪容疑のある市長50人以上、判事9人、議員、元議員、警察官、兵士などが名指しで公表されたこともあります。
多少荒々しくはあるものの、フィリピン国民にとっては長年待ち望んでいたことです。
また、自分の命が狙われることすらも厭わないと発言したこともあり、その覚悟の決め方がヒーローっぽさを醸し出しているのでしょう。
残り3年弱の任期で、どれだけこの国からドラッグと汚職をなくすことができるのか?
ダバオの時のような劇的な変化をもたらすことができるのか?
フィリピン国民は多いに期待しています。