フィリピンで相次ぐイリエワニ被害、その生態とは?
フィリピン南西部のバラバク島では、イリエワニが人を襲う事例が相次いでいます。
今回被害に遭ったのは、20歳の漁師の男性。
夜に仲間とともに漁から島へ戻る途中に、体調4.9メートルほどのイリエワニにボートから男性が引きずり落とされた模様です。
翌日、ワニの顎から男性の遺体が発見されたとのこと。
ワニはその後、ダイナマイトによって殺処分されたということです。
バラバク島のあるパラワン州では、2ヶ月ほど前にも10歳の少年がイリエワニに襲われて死亡しているほか、今年だけで漁師と15歳の少年、島周辺で2人の住民も死亡しているそう。
■イリエワニとは?
イリエワニは、いわゆる「クロコダイル」とも呼ばれている大型のワニです。
なんと1億年もの間その姿をほとんど変えていないため、「生きた化石」とも言われています。
インド南東部からベトナムにかけてのアジア地域、ニューギニア島、オーストラリア北部などに生息しているほか、日本でも奄美大島、西表島、八丈島などで発見例があります。
現在生息している爬虫類の中では最大級で、体長は平均4メートル、体重は450キロにもなり、特に巨大な個体では7メートルに及ぶこともあると言います。
名前の通り入江によく生息していますが、マングローブ林や池沼、河川の上流、湖など、海水・淡水を問わず水辺で発見されています。
肉食で、魚だけでなく鳥類、両生類、爬虫類、甲殻類、哺乳類など何でも捕食します。
さらに、水牛やイノシシなど、顎で捕らえられるものなら相手が大きな動物でも関係ありません。
水面下に沈んでじっと獲物を待つことから「日和見性捕食者」と言われ、一度噛み付いて水の中に引き摺り込むと、獲物が溺れるまで離しません。
性格も攻撃的で世界で最も獰猛であり、噛む力もワニの中で最大。
人間の飼う家畜が襲われた例もあります。
■”人食いワニ”
イリエワニが人を襲った例は数知れず、”人食いワニ”の異名も持ちます。
2011年9月にフィリピンのミンダナオ島で捕獲された「ロロン」は、12歳の少女と農民2名の計3名を捕食し、体長6.17メートル、体重1.075トンあったことから、「世界最大の捕獲されたワニ」として、ギネスブックにも載りました。
世界中でワニに襲われて死亡する人は年間140人と言われています。
カバやゾウなどに次いで、人の命を数多く奪っている生物の1つです。
■減少しているイリエワニ
多くの人々の命を奪い恐れられているイリエワニですが、その頭数は減少傾向にあります。
人間が彼らの住処となっている水辺を侵食しているだけでなく、皮製品に価値があることから密漁も行われてきました。
また、イリエワニの餌となる生き物も減っているのです。
絶滅危惧種とまではなっていませんが、食べ物が十分にないために人を襲っているのは事実。
人が襲われる事故を減らすためには、彼らの生息地を保護するなど、根本的な原因に対処する必要があります。
■フィリピンでは何に気をつければ良い?
フィリピンであっても、当然ながらマニラやセブなどの都市部でイリエワニに遭遇することはありません。
気をつけたいのは、林にある水辺や湖、川の上流などです。
上述したように、パラワン州では何件もの目撃例や事故があります。
フィリピンでは自然の中に遊びに行くアクティビティやツアーもたくさんあります。
もしも水辺で遊ぶ機会があれば、イリエワニが発生していないかスタッフなどに尋ねても良いでしょう。
なお、ビーチにはいませんので普通に海水浴やシュノーケリングをしていても危険はありません。
そこではイリエワニではなく、クラゲやウミヘビなど別の危険生物に注意する必要があります。
いずれにしても、観光エリアとして開発されていない場所で自己判断で川や池などに入って遊ぶのは絶対にやめましょう。
また、万が一見かけた場合は絶対に近づかず、静かにその場を離れてください。
イリエワニは陸上でも走ることが可能なので、刺激しないことが重要です。