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戦後フィリピンに残された日系2世の今とは?


今でこそ日本とフィリピンの関係は良好で、フィリピンには親日家も多いですが、過去には戦争が行われていた時代があります。

フィリピンは1521年にマゼランが到着してから、スペインに統治されていた時代が300年ほどありました。

そして1898年からはアメリカの統治が始まり、1942年には日本がマニラを占領しました。

もともと日本は、フィリピンをアメリカの支配下から救うという名目でしたが、実際は日本もフィリピンを植民化しようと企んでいました。

 

<戦前にフィリピンに住んでいた日本人たち>

ただ、日本軍がフィリピンを攻撃し始める前までは、フィリピンには多くの日本人がフィリピン人とともに平和に暮らしていたこともありました。

フィリピン人女性と結婚して子供をもうけ、家族を築いている日本人男性も数多くいました。

特にミンダナオ島のダバオには、最も多い時で2万人もの日本人が住んでおり、アジア最大級の「日本人街」も作られていました。

しかし戦争が始まってからは、居留していた日本人たちは妻子を守ることができず、彼らのほとんどは戦死したり日本へ強制送還されていったのです。

大黒柱であった父親を失った妻と子供は、そこから貧しい生活を余儀なくされたと言います。

 

<日本人であることを抹消された日系2世>

日本人の父親とフィリピン人の母親を持つ日系2世の子供たちは、当時は自分が日本人であることを隠さねばなりませんでした。

フィリピンにとって日本は敵であり、そのことが知られれば迫害に遭うことが分かっていたからです。

日本人であることを隠し、フィリピン人とともにフィリピンで生き抜かねばならないと思った彼らは、戸籍も出征証明書も抹消し、名前もフィリピン風のものに変えました。

子供が小さい場合には、母親が自分の子供をフィリピン人として育てました。

そのため、自分には日本人の血が流れていることを知らないまま育った日系人も多くいました。

 

<無国籍になってしまった人々>

日本人ではなくフィリピン人として人生を生きてきたならまだしも、フィリピン・日本どちらも国籍も持たない無国籍状態の残留2世もいます。

現在残留2世に関しては調査が行われている最中ですが、今年3月の時点ですでに1,069人に上っていたそうです。

残留2世は、7,000以上もの島を持つフィリピンのどこにいるか分からないため、すべての地域で把握するのは困難で、時間もかかります。

 

<日系人会とフィリピン日系人リーガルサポートセンター>

国籍を持たない残留2世や、今からでも日本の国籍を取得したいと望む日系人をサポートするため、現在フィリピン各地に「日系人会」があります。

日系人会は、NPO法人「フィリピン日系人リーガルサポートセンター」と連携し、フィリピンに残る日系人の身元調査や日本国籍取得に必要な証拠集めを手助けしています。

日系人は、特に日系人の多かったミンダナオ島のダバオをはじめ、首都マニラ、ルソン島北部のバギオなどにあるほか、去年はパラワン島にも設立されました。

 

<高齢化する日系2世>

現在フィリピンに残っている日系人は、今年3月時点で3,810人、そのうち父親の名前などが判明して日本国籍が取得できているのは654人ほどにとどまっているそう。

隠滅した証拠をもう一度探し出し、日本人の父親がいたことを証明するのは本当に難しいのです。

戦後74年が経過してしまっているため、すでにフィリピンで亡くなってしまった人も多いでしょう。

高齢化した日系2世の人々には、もう日本人として生きる時間があまり残されていないのです。

 

<今の私たちができることは?>

現在フィリピンに残されている日系2世の人々の多くは、戦後なんとか生き延びてきてはいるものの、決して豊かとは言えない生活を送っています。

中には、自宅に電気や水道もなく、山に水を汲みにいくという暮らしをしている人もいます。

本来ならば、私たち日本人と同じように不自由のない生活をする権利があるはずですが、戦争という過去が今彼らにこういった運命を与えているのです。

フィリピン日系人リーガルサポートセンターのスタッフは「残された日本人を一人でも多く助けたい」「この悲劇を若い世代が語り継いでいかなければならない」と話します。

今すぐに私たちが出来ることはあまり無いかもしれませんが、日本とフィリピンには決して浅くはない関係があること、現在もフィリピンには自分たちの祖先が残してきた爪痕が残っていることを知っておくべきかもしれません。