中国がフィリピンでのカジノ、オンラインカジノを規制する動き
フィリピンでは今カジノ産業が盛況していますが、その顧客には多くの中国人もいます。
今回中国は、フィリピンでのギャンブルおよびギャンブル業界で働くこと関して規制を設ける動きを見せており、これがフィリピンのカジノ産業にとってマイナスになると言われています。
<フィリピンのカジノ産業>
フィリピンのカジノ産業はここ10年近くの間に急速に成長しており、その市場規模は拡大を続けています。
2010年には5.6億ドルだったのが、2015年には2倍以上の12億ドルを突破。
アジアのカジノ市場で最も大きいのはマカオで、約621億ドル。
次にシンガポールの約71億ドル、韓国の約26億ドルが続き、フィリピンは第4位にランクインしました。
日本人が経営する「オカダ・マニラ」や、2015年に完成した「シティ・オブ・ドリームズ・マニラ」など、ゴージャスで巨大な施設が次々と作られ、地元の富裕層や外国人観光客を誘致しています。
<中国人富裕層とカジノ>
そんなフィリピンのカジノ産業を支えているのが、中国人観光客です。
観光省によれば、中国人観光客は2016年の時点で67万人がフィリピンを訪れており、日本人観光客を上回りました。
これは、ドゥテルテ大統領が外交政策において中国に対し友好的な姿勢を示したことが影響していると言われています。
もともと中国ではギャンブルは厳しく規制されており、巨万の富を有する富裕層もお金を使う場所がありません。
そのため、その多くは海外へ出かけてカジノに興じるのです。
フィリピンだけでなく、マカオもシンガポールも、カジノの収益は中国人が大半を占めています。
<中国政府に海外でのギャンブル規制>
中国政府はそんな中、海外でのカジノおよびオンラインカジノを規制する動きを見せています。
先週末在フィリピン中国大使館は、フィリピン公営の賭博会社であるフィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレーターズ(POGO)に雇用されている中国人労働者と中国人顧客に対し、取り締まりを行うと発表しました。
本国では禁止されているギャンブルに、海外で大勢の中国人が関わっていることに懸念を抱いているようです。
また、フィリピンのカジノ業界に中国人富裕層が多額のお金を落としていることに関しても、「中国の資金が流出している」と指摘しています。
今後は中国国外でも中国人のギャンブル活動に規制がかかる見込みです。
<成長するオンラインカジノ産業>
フィリピンのカジノ産業を支えているのは、実際にある建物のカジノだけではありません。
フィリピンはオンラインカジノの正式ライセンスを持つ国でもあり、特に外国人向けのオンラインカジノ産業が成長しているのです。
フィリピン紙マニラブレティンによれば、2018年のオンラインカジノ産業の収入は、前年の34億ペソ(約69億円)から60億ペソ(約130億円)にまでに急増する見通しだそう。
<ドゥテルテ大統領の意向>
カジノ産業がフィリピン経済を潤わせていることは間違いありませんが、ドゥテルテ大統領はオンラインカジノに関しては運営を厳重にしています。
PEZA(フィリピン経済特区の1つ)においても、現在はオンラインカジノの運営は禁止です。
ドゥテルテ大統領がこの規制を打ち出すまでは普通に運営できていた100社以上のPEZA内のオンラインゲーミング会社が、大打撃を受けました。
しかしながら、フィリピンにはPEZA以外にも300以上の経済特区があり、その中ではオンラインカジノはまだ規制されていません。
ドゥテルテ大統領としては、自国のカジノ産業をさらに成長させつつ、オンラインカジノによる莫大な収益も確保したいという狙いがあるのかもしれません。
<中国人ギャンブラーはマカオへ?>
中国国内で違法にオンラインカジノに手を出している中国人も数多いると思われますが、中国政府はそういったオンラインゲーミングや決済プラットフォームを提供している事業者も一掃すると述べています。
中国人富裕層がオンラインカジノも出来ず、フィリピンでのカジノ遊びも出来なくなれば、彼らはマカオへ流れていくでしょう。
中国は、マカオでのギャンブルに関しては何の規制も敷いていないのです。
マカオはその一部が中国の管轄・支配下であるため、当然といえば当然かもしれません。
フィリピンのカジノ産業にとって中国人富裕層がいなくなることは大きなマイナスになりますが、マカオには逆に大きなプラスです。
このところ親中の姿勢を見せているフィリピンですが、このような中国の動きによって経済的に大きなダメージを受ける可能性があるところを見ると、両国の関係は今後また一転するかもしれません。