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過密するフィリピンの刑務所の現状とは?


フィリピンではドゥテルテ大統領の麻薬撲滅政策によって、麻薬犯罪に関わった人々が次々と刑務所に送られています。

刑務所は、その収容人数をはるかに超えた人数の受刑者たちを抱えており、施設内の環境の悪化が問題視されています。

街から麻薬犯罪がなくなることは確かに平和につながりますが、新たな弊害も生まれているのです。

 

<通常の20倍の収容人数>

犯罪者の急増により過密状態になっている刑務所には、平均して通常の収容人数の4.4倍の受刑者が入っています。

ひどいケースだと、20倍になっているところもあるそうです。

施設内には全員が寝るスペースは確保されておらず、受刑者はみんな座ったまま寝たり、外や運動場で寝たりして過ごしています。

まさにすし詰め状態です。

マニラのナボタス刑務所では、通常8人用の部屋になんと160人も収容されています。

また、ケソンシティ刑務所では、定員800名の施設に2,500人が収容されているということです。

 

<衛生環境の悪化>

寝るところが足りないのはもちろん、受刑者たちのスペースにはエアコンもありません。

ただでさえ超満員になっているのに、暑さで人々は汗をかき、悪臭も放っています。

さらに、環境の悪さから受刑者たちは夜まともに睡眠をとることができません。

そのため、免疫力が下がり、病気にかかりやすくなります。

清掃もまともにされていない刑務所では、汚染水からコレラが発生したこともありました。

さらに、同性同士による性交渉も行われており、HIVをはじめとする感染症も深刻化しています。

 

<更生が難しい>

刑務所は、本来は犯罪者たちがまた社会に戻れるようサポートする役目を持っています。

しかし、現在のフィリピンの刑務所はあまりにも人が多く、何にも集中できない、イライラが募る、眠れないなどの悪条件が重なっているほか、受刑者数に見合った刑務官も足りていません。

さらに、職業訓練をするためのスペースも足りません。

こういった環境で受刑者が更生するのは、なかなか難しいと言われています。

たとえ釈放されても、社会で仕事ができなければまた彼らは犯罪に手を染め、刑務所に戻ってきてしまいます。

結局、根本的な解決には繋がらず、ただ同じことを繰り返してしまうという負のループが生まれつつあるのです。

 

<保釈金も払えない>

刑務所にいる受刑者の中には、保釈金さえ払えれば外に出られる人も実はたくさんいます。

しかし、貧困層が圧倒的に多いため、みんな払うことができません。

さらに、フィリピンは司法手続きがものすごく遅いため、受刑者たちは裁判を受けるまでに何年も待つ必要があります。

このような条件からも、刑務所内は人が増える一方で、なかなか減ることがないのです。

 

<殺されるよりはマシ?>

そもそも、刑務所がパンク状態になったのは、麻薬関連犯罪者たちが捕まったためです。

刑務所内は文字通り地獄ですが、それでも「殺されるよりはマシだった」と話す受刑者も多いそう。

フィリピンでは麻薬がそこら中で売られています。

貧困層は空腹を満たすためにドラッグに手を出し、ドゥテルテ政権の方針によって裁判にもかけられずに捜査当局に殺されます。

これまでに殺害された人数は、すでに5,000人以上となっています。

犯罪に関連していることが明らかなのに、殺されず刑務所行きになった人は、逆にラッキーだったということです。

 

<社会復帰を望む受刑者たちも>

もともとは麻薬犯罪に手を染めてしまった犯罪者たちも、この過酷な環境下から出られるならどんなことでもする、と話します。

殺されなかったとはいえ、人間的な生活ができず肉体的にも精神的にも限界なこの場所では、生きている心地はしないでしょう。

 

<理想は犯罪者ではなく麻薬の根絶では?>

ドゥテルテ大統領が麻薬戦争を始めてから、確かに街からは犯罪が減っているのかもしれません。

しかし、更生されるでもなく死刑になるのでもない、裁判にもかけられない、そんな犯罪者たちが刑務所に増える一方では、フィリピン社会にまた新たな問題を作ってしまうことになります。

麻薬犯罪者を罰するよりも麻薬自体を根絶する方策があればベストですが、その方法はドゥテルテ大統領もまだ分からないようです。