フィリピンを旅行したノルウェー人女性が狂犬病で死亡
現代の日本ではほとんど馴染みのない「狂犬病」。
しかし、世界にはまだまだ狂犬病が根絶していない国が数多くあり、毎年なんと5万人もの人々が命を落としています。
狂犬病はウイルス性の人獣共通感染症であり、発症すれば有効な治療法は存在せず、確実に死に至るという恐ろしい病気です。
フィリピンでもまだ根絶には至っておらず、渡航時には現地の犬などの動物と接触しないよう注意喚起されています。
今回、2月にフィリピンを旅行した24歳のノルウェー人女性ビルギッタ・カレスタッドさんが現地の犬と接触し、5月6日にノルウェーで亡くなったことが報じられました。
ノルウェーでは過去200年以上、狂犬病による死者は出ていなかったそうです。
ビルギッタさんはフィリピン旅行中に路上で見つけた子犬を宿泊先へ連れ帰り、遊んでいる時に噛まれたようです。
小さな傷であったため消毒はしたものの、狂犬病に感染しているとは思わず治療は受けていなかったとのこと。
ノルウェーに帰国した直後から頭痛や発熱などの体の不調の訴え、病院を受診するものの原因がわからず、症状はどんどん悪化。
この時はまさか子犬と接触したことが原因だとは疑っておらず、最終的に医師がスウェーデン公衆衛生局にサンプルを送ったことで、狂犬病に感染していることが明らかになりました。
しかしその時にはすでに悪化が進んでしまっており、2日後に亡くなったということです。
ノルウェーではフィリピン旅行の前に予防ワクチン接種を勧めていますが、その中には狂犬病のワクチンは入っていなかったそうです。
ビルギッタさんの家族はこれを機にノルウェー政府に対し、フィリピンに渡航する際には狂犬病のワクチンも接種することを義務付けるよう呼びかけています。
日本の厚生労働省によれば、狂犬病が完全に清浄されているのは、日本、グレート・ブリテン島、北アイルランド、アイルランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、ハワイ、グアム、フィジー、オーストラリア、ニュージーランドのみ。
逆に、狂犬病による死者が最も多いのはインドとなっていて、毎年約2万人の人が亡くなっているそう。
その他、中国、パキスタン、インドネシアのバリなどでも感染者・死亡者ともに多くなっています。
フィリピンでの狂犬病による死者は毎年200〜300名に上ります。
実は日本人旅行者の間でも、横浜と京都で感染者が確認されています。
どちらもフィリピンに渡航しており、現地の飼い犬に噛まれ、帰国後に発症して死亡しています。
日本で普通に生活していると特に意識することもない病気ですが、海外旅行に行く際はとにかく動物と接触しないよう注意する必要があります。
犬だけでなく、猫、イタチ類、アライグマ、コウモリ、スカンク、キツネ、マングース、馬、牛、ジャッカルなど、あらゆる哺乳類を介して感染する可能性があります。
潜伏期間は1〜3ヶ月で、中には1〜2年後に発症した事例もあるそうです。
発症すれば、発熱、頭痛、嘔吐などを起こし、悪化すると幻覚を見たり水や風を怖がって痙攣を起こすといった独特の症状が現れ始めます。
そして最後は昏睡状態になり、呼吸麻痺が起きて死に至ります。
狂犬病感染を予防するには、とにかく動物と接触しないようにすることです。
野生動物や野良犬などだけでなく、ペットとして飼われているものも危険です。
狂犬病に感染している犬は、よだれを大量に垂らして無意味にうろつくなど、見た目も挙動もおかしくなっています。
もし様子のおかしい動物がいたら、絶対に近づかないようにしてください。
万が一噛まれた場合は、すぐに傷口を石鹸で洗い、医療機関でワクチンを接種してください。
狂犬病ワクチンは、感染しても発症する前であれば効果があるとされていますので、早急に対処すれば助かります。
また、フィリピンをはじめ、根絶されている国以外へ行く際には渡航前にワクチンを接種しましょう。
日本国内の医療機関で接種可能です。