フィリピンの厳しいカトリックのルールとは?
フィリピンはアジアの中ではかなり珍しいキリスト教国。
国民の80%がカトリック教徒です。
フィリピンに滞在してみるとわかりますが、彼らの生活の中にはキリスト教が根付いています。
日曜に教会のミサに参加するのはもちろんのこと、キリスト教関連のお祭りも多いですし、一般家庭やタクシーの車中など、生活の中でイエス様やマリア様の像や十字架もよく見かけます。
日本人は無宗教な人が多いと言われているので、熱心に信仰する気持ちが理解しづらい部分もあると思います。
しかしフィリピンでは、国家そのものが厳しいカトリックのルールを守っています。
■突然始まる、お祈りの時間
フィリピンでは日曜日の礼拝のほかに、毎日定刻になるとショッピングモールやスーパーマーケットなどでお祈りの時間をお知らせするアナウンスがあります。
神父が聖書の一節を読み上げるのです。
お祈りの時間中はお客もスタッフも動きを止め、その場で静かに祈ります。
この場面に初めて居合わせると、突然周りが動きを止めて祈り出すのでちょっとびっくりします。
とてもシリアスな時間なので、ここで笑ったりふざけたりしていけません。
終わるまで一緒に静かにしていましょう。
もちろん、一緒に祈っても大丈夫です。
■離婚できない
キリスト教では、一度夫婦になると最期までお互いを支え合い、一緒に試練を乗り越えていくという教義があります。
そのため、フィリピンでは離婚ができません。
というより、離婚という制度が存在していません。
法律もキリスト教がベースなのです。
これは、日本人・フィリピン人の間でも結婚でも同じこと。
フィリピン人女性と恋に落ちて結婚する日本人男性は大変多いですが、しばらく経って関係が破綻してくるケースもかなりあります。
二人とも日本に住んでいる場合は日本人同士と同じ手続きで離婚可能ですが、フィリピンに住んでいる場合は「離婚」はできず、「婚姻解消手続き」や「離婚承認手続き」といったフィリピン独特の手続きを行います。
しかしこれらを行うにはかなりの時間とお金もかかるため、実際は離婚したくても諦めている人たちが多いのが実情です。
実は数あるカトリック教国の中でも、法律で離婚できないのは世界でフィリピン一国だけです。
■中絶できない
聖書には「汝、殺すことなかれ」という言葉があり、フィリピンでは中絶も法律で禁止されています。
それもかなり厳格に禁止されていて、たとえレイプされて妊娠した場合であろうと、障害を持っていることが分かっていようと、実父の子だろうと、母体の命に関わろうと、いかなる場合も禁止なのです。
フィリピンでは、中絶は殺人とみなされています。
もしも中絶を行なった場合、その医師は医師免許を喪失し、中絶した女性もまた、禁錮2〜6年に処されます。
中には法をくぐり抜けて中絶を行なっている医者もいますが、技術や環境が整っていないことも多く、不衛生なために、妊婦が病気になったり最悪の場合手術に失敗して命を落とすこともあります。
胎児は殺してはいけないけれど、結果的に女性が亡くなってしまうのは、どちらが正しいのか物議を醸すところです。
フィリピンの人口はどんどん増えて続けていますが、その背景には実はこの宗教的な要因も大きく絡んでいるのです。
産んでも育てられないのに産まなければならない現在の体制が、フィリピンの貧困問題を悪化させていることも否定できません。
■避妊できない
中絶禁止なのに、避妊も禁じているというからなかなかトリッキーです。
とにかくカトリック教では、人口的なことはすべてダメとしているようで、避妊、中絶、人工授精すべて禁止です。
政府としては貧困問題解消や経済発展のためにも避妊具は使用するべきとして、コンドームを配布する活動を行おうとしましたが、国内で絶大な権力を持つ教会によって、最終的にはこの活動は中止されました。
また、女性たちもいまだに「避妊は倫理に反する」と考えているケースが多く、避妊具の使用を嫌がる人たちが大勢います。
フィリピンは世界でも有数の夜遊びスポットとして知られていますが、風俗店で働く女性たちもコンドームを拒否することが多々あるようです。
父親が誰なのかも分からないまま妊娠・出産し、貧困と戦いながらシングルマザーとして生きている女性がフィリピンにはたくさんいるのです。
■”明日を案じてはならない”?
キリスト教の聖書には、「明日のことを心配してはならない」という教えがあります。
フィリピン人が貯金をほとんどせず、手元にあるお金を全部使い果たしてしまうのは、この教えも関連していると言われています。
未来のために計画を立てることはよしとせず、今を生きよう、といった思想のようです。
また、隣人を助けるという教えから、お金がなくなったら人に借りれば良い、という考えも持っている人が多いです。
これが良いか悪いかは個人の意見によって分かれるところだと思いますが、フィリピン人はとにかく無計画にお金を使い、給料日前には本当にゼロになるという、日本人にはちょっと理解できない金銭感覚を持っています。
■4ヶ月祝うクリスマス
キリスト教徒にとって、クリスマスは最大かつ最重要イベントです。
フィリピンではなんと、9月からクリスマスの装飾が始まり、12月まで4ヶ月間に渡って祝い続けます。
単なるイベントではなく、宗教的な意味が深いので、とても真剣です。
この時期は人々の消費も高まり、ショッピングモールにはいつも人がいっぱいです。
日本ではクリスマスは恋人と過ごすのが定番となっていますが、フィリピンでは家族と過ごすのが超重要です。
また、家族だけでなく会社単位でもクリスマスパーティは絶対に行います。
もしもあなたがフィリピンで会社をやるなら、クリスマスパーティは従業員への労いの意味を込めて必ず行いましょう。
その際、従業員の家族も呼んであげると喜ばれます。
パーティではフィリピンのお祝いでは必ず出される伝統料理「レチョン」が必須アイテムです。
■ホーリーウィーク(イースター)とは?
日本でも近年少しずつ知られるようになってきたイースター。
キリストの復活祭です。
年によって日が異なりますが、基本的には「春分後の最初の満月の次の日曜日」なのだそう。
加えて、その前の木曜は「最後の晩餐の日」、金曜は「キリストが亡くなった日」、土曜を「キリストがお墓に葬られた日」としていて、この4日間を合わせて「イースター(ホーリーウィーク)」と呼んでいます。
フィリピンではイースターの期間、教会や家庭でさまざまな行事が行われます。
また、イースターの期間は語学学校も休みになるので、留学予定の人は注意しましょう。
■シヌログ祭り
フィリピンのセブでは、毎年1月に「シヌログ祭り」が開催されます。
幼少期のイエス・キリストである「サント・ニーニョ」を祝うもので、フィリピン最大規模お祭りです。
顔にペイントをした人々が集まり、観光客も世界中から押し寄せ、実に400万人もの人々が練り歩くパレード。
交通機関もストップさせ、飲んで歌って踊って騒ぐ、正直言ってかなり破茶滅茶なお祭りとなっています。
機会があれば観光で見てみても良いと思います。
<宗教の話はしない方が無難>
いかがですか?
フィリピンではキリスト教が良くも悪くも非常に大きな影響力を持っています。
現地では、彼らの信仰心を尊重し、理解しようとする姿勢が大切です。
間違っても、神様の存在を否定するような発言はしてはいけません。
また、フィリピンにはカトリック教徒の他にも、わずかですがイスラム教徒もいます。
いずれにしても、何を信じるかは人それぞれですので、基本的には信仰の話はあまりしない方が無難です。