フィリピンの言語と英語・日本語のレベル
フィリピンの経済が順調な理由の1つとして、この国が英語公用国であることが挙げられます。
フィリピン人の母国語はタガログ語などをはじめとするフィリピン語ですが、小学校から英語教育が発達しているため、シティに住む人々のほとんどはバイリンガルです。
また、フィリピン留学が人気を集めているのも、フィリピン人の英語力が評価されているからに他なりません。
しかし実は、国民全員が英語を流暢に話せるかというと、実はそうではありません。
教育格差の大きいフィリピンでは、言語能力にも差があるのです。
<そもそもフィリピンの言語とは・・>
フィリピン語=タガログ語という考え方が浸透してはいますが、少数民族がたくさんいるフィリピンには、その民族の数だけ言語が存在します。
7,000も島がある国なので何ら驚くことでもないですが、特に観光地として開拓されていないような田舎では、その地で通じない超ローカルな言語が話されています。
タガログ語は「国語」であるのは間違いないですが、必ずしも「母語」ではないのですね。
かつて、ケソン大統領によって「フィリピン人としてのアイデンティティを失わないように」と、英語と一緒に公用語化されました。
島のローカルな言語を話していたフィリピン人も、タガログ語が公用語化され学校教育に組み込まれたことで、タガログ語を学ぶことになりました。
母語の数はフィリピンでは172以上あると言われています。
いまだに田舎の島では、タガログ語を話すと「自分たちの仲間ではない」という感情を抱かれることがあるようです。
<フィリピンで英語教育が発達した理由>
フィリピンは、スペインに300年ほど統治されたあと、今度はアメリカに100年ほど植民されていた時代があります。
英語教育はこの時代に浸透しました。
アメリカとしては、多種多様な言語を話すフィリピン人をまとめるために、言語を統一しようとしたのですね。
大勢のアメリカ人教師たちがフィリピンへ送り込まれ、フィリピン人に英語教育を行いました。
その当時の教育システムが現在も残っており、高い英語教育のレベルが維持されています。
<タグリッシュとは?>
フィリピンへ行くと、いろんな言語が飛び交っていることに気づきます。
「タグリッシュ」もその1つです。
タグリッシュとは ”タガログ+イングリッシュ” つまりタガログ語と英語を混ぜながら話される言葉のこと。
基本的にはタガログ語話者である彼らは、英語を完璧に話せるわけではありません。
ただ、生活の中には両方の言語が存在しているため、だんだんと混ぜて話すようになったのでしょう。
街の中の標識などを見ても、英語とタガログ語が両方使われています。
逆に、純粋なタガログ語のみを使う人口も少なくなっています。
英語がわかる人がタグリッシュの会話を聞いた場合、いくつか英単語が聞こえるため、相手の意図を推測することができるかもしれません。
■タグリッシュの例:
「運転手を呼んでくれますか?」
タガログ語:“Pakitawag ang tsuper.”
タグリッシュ:”Pakitawag ang driver.”
タグリッシュに対しては、新しい言語として受け入れている人もいれば、「タガログ語の減退である」と悲観的に見ている人もいるようです。
<特に英語が流暢なのは富裕層>
英語が得意とはいえ、フィリピン人の母国語はあくまでもフィリピン語。
基本的にフィリピン人同士の会話はタガログ語が使われています。
実は、英語が流暢に使えるのは高等教育を受けた人たち、いわゆる”エリート”だけです。
フィリピンにも日本と同じように公立学校と私立学校がありますが、レベルの高い英語力を身につけるためには、私立の学校もしくはインターナショナルスクールへ行く必要があります。
公立学校よりも学費が高いため、通えるのは富裕層のみです。
彼らはお金も学力も英語力もあるおかげで大学まで卒業することができ、より給料の高い職業に就くことができます。
ですので、フィリピンでは英語が流暢に話せる=裕福である、とも言えるのですね。
<”フィリピン留学=英語漬け” ではない>
気をつけたいのは、フィリピン留学をしたからと言って英語漬けの生活にはならないということです。
上述したように、フィリピン人同士の会話はタガログ語かローカル言語なのです。
語学学校ではもちろん講師も生徒も英語を話しますが、街へ出れば英語を話していない人の方が多いことを知っておきましょう。
<タガログ語が苦手なフィリピン人も>
私立学校で高等な英語教育を受けたフィリピン人は、校内での英語使用頻度が高いために、逆にタガログ語が苦手になっていく場合もあるようです。
エリートの大学であるほど、レポート提出やプレゼンテーションなどすべて英語なので、おのずとタガログ語に触れる機会が減っていくのです。
家庭や友人間でタガログ語を使っていれば維持できそうですが、親がタガログ語を話さないなど、環境によっては自宅でも英語ということもあります。
標準的なタガログ語は理解できても、ローカルの人々が使うような砕けた表現や難しい文献などは、理解できないことが多々あるのですね。
このようにフィリピンには、英語優勢の人口とタガログ語優勢の人口がいます。
<コミュニケーションに支障はない>
英語、タガログ語どちらかに偏りがある人同士でも、特にコミュニケーションに支障はないようです。
タグリッシュもありますので、言った単語がたとえ理解してもらえなくても、何らか通じ合う手段が存在するのですね。
また、一般庶民であっても、簡単な英語や日常会話はできます。
流暢に話せない人もリスニング能力は高いようで、フィリピンの映画館ではハリウッド映画も字幕なしです。
そのため、英語のわかる日本人なら、フィリピン人とのコミュニケーションに基本的に困ることはないでしょう。
それに加え、フィリピン人には強いホスピタリティがあります。
たとえ言葉が通じなくても、相手を理解しようとする姿勢や助けてあげたいという気持ちが伝わってくるのです。
相手が英語が苦手だと分かれば、ゆっくり話してくれます。
こういった国民性からも、もともとフィリピン人はコミュニケーション能力に長けていると言えるかもしれません。
<日本語学習者は少ない>
そんなバイリンガルが多いフィリピン人ですが、日本語能力はというと、他の諸外国と比べてあまり高くないようです。
アジアを中心に日本語学習者は世界中に3,655,024人いますが、そのうちフィリピン人の学習者は50,038人(2015年のデータ)。
学習者数ランキング1位の中国が953,283人であるのを見ると、近い国であるにも関わらずフィリピンの学習者は案外少ない印象です。
また、日本語能力試験(JLPT)の受験者数は主要アジア諸国で最下位となっており、しかも受験している級は「N4」というあまり実用性の高くない低いレベルです。
すでに英語をマスターしている彼らにとって、第3言語として日本語を学ぶメリットはそこまで大きくふぃりないのかもしれません。
<タガログ語を学べばもっとフィリピンがわかる>
フィリピンでビジネスや事業拡大を考えているなら、確実に言葉の壁を乗り越える必要が出てきます。
その際、フィリピン人に日本語を学ばせるのは簡単ではないでしょうし、時間もかかります。
やはり私たちが英語を習得してしまうのが一番手っ取り早いです。
また、フィリピン人とより親密になり強い信頼関係を結べるようになりたいなら、タガログ語の学習を検討してみましょう。
彼らにとって一番心地よい言語であるタガログ語でコミュニケーションができるようになれば、英語では言えない本音なども話してくれるようになりますし、意思疎通ももっとスムーズになります。
その国を深く知ろうと思ったら、言語を学ぶのは実は大変良い方法です。
<通訳を雇う方法もある>
言語を習得する前に早く現地でビジネスを展開したいと考えているなら、最初は通訳を雇うのも良いと思います。
英語、タガログ語、日本語すべてが使える通訳者がいれば、もしも会社を設立するとなっても、細かい手続きや書類作成などの翻訳もお願いできます。
さすがに法的なことを片言の英語でやりとりするのは不安がありますよね。
また、フィリピン初心者の場合は道案内などもやってもらえる通訳者がいれば安心です。
フィリピンでビジネスや不動産投資、資産運用を考えているなら、まずは通訳付きで視察に出かけてみてください。
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