アメリカ元大統領がフィリピンの少年を支援していた
ちょっとほっこりするような、切ないようなニュースです。
11月30日、アメリカの第41代大統領ジョージ・H・W・ブッシュ氏が94歳で死去しました。
今回、彼が生前慈善団体を通して、あるフィリピンの子供のスポンサーをしていたことが明らかになり、話題を呼んでいます。
ブッシュ氏は10年間に渡って、フィリピンのティモシー君という男の子を経済的に支援していました。
ティモシー君が7歳の時から文通を始め、教育費や課外活動費、食費などを提供していたそうです。
ブッシュ元大統領が最初にティモシー君に手紙を書いたのは、2002年のこと。
もちろん、元大統領であったことは秘密で、「私はあなたの新しいペンパルになりたいと思っています。年寄りで77歳ですが、子供が大好きです。まだ会ったことはないけど、君のことがもう大好きです。」などと書かれていたとのことです。
ブッシュ元大統領がスポンサーになったのは、2001年に開かれたクリスマスコンサートがきっかけでした。
コンサートの合間に支援活動の紹介をした際に、ブッシュ氏が興味を持って始めたそうです。
しかし、アメリカの元大統領が支援しているとなれば、子供が危険に晒される可能性もありました。
そのため、手紙はすべてこの支援活動をホストしている国際児童支援団体コンパッション・インターナショナルのウェス・スタフォード氏が目を通してから届けられていました。
彼によれば、元大統領であることは秘密であったにも関わらず、ブッシュ氏はたびたびそれをにおわせるような文章を書いていたとのこと。
また、自分の愛犬の写真を送ったり、クリスマスにホワイトハウスへ招待されたとも明かし、ヒントを与えて続けていたそうです。
ティモシー君は、バスケットボールやギター、そして絵を描くのが好きな男の子でした。
それを知ったブッシュ氏は、プレゼントは禁止されていたにも関わらず、スケッチブックや色鉛筆、色ペンなどを送っていたそうです。
ティモシー君もお礼の手紙を書き、二人の文通はティモシー君が17歳で支援プログラムを卒業するまで続きました。
そして支援が終了した2012年に、ティモシー君は初めて自分を支援してくれていた文通相手がアメリカの元大統領であることを、コンパッション・インターナショナルから知らされたそうです。
ティモシー君は大変驚いたそうですが、この時を境に行方が分からなくなってしまったとのこと。
しかし、コンパッション・インターナショナルのスタフォード氏は「連絡が途絶えても、うまくやっているに決まっている」と話しています。
そんなエピソードを残してこの世を去ったジョージ・H・W・ブッシュ氏の国葬が、12月5日に行われました。
息子であり第43代大統領であるジョージ・W・ブッシュ氏は、自身の父親について「高潔な人で最高の父親」と追悼しています。
また、カナダの元首相ブライアン・マルローニー氏も、「本物のリーダーで、公明でゆるぎなく勇敢な人物」と追悼しました。
ティモシー君の消息は分からなくなってしまいましたが、ブッシュ元大統領から支援を受け、文通していた経験は、彼の人生に大きな影響を与えたことでしょう。