フィリピンの希少な生き物たち
7,000を超えるフィリピンの島々には、多種多少な動物たちが住んでいます。
陸上の哺乳類はもちろんのこと、美しいサンゴ礁のある豊かな海にもさまざまな海洋生物が生息しており、訪れる人々に生命の神秘を伝えています。
今回は、そんなフィリピンに住む珍しい生物たちの中でも、特に個体数が減ってしまった絶滅危惧種や、保護の対象となっている希少な固有種をご紹介します。
■フィリピンタルシウス
「ターシャ」の愛称でも知られる、世界最小のメガネザルです。
セブ島の南東、ボホール島およびミンダナオ島にも生息しています。
その小ささは全長10〜14センチほどで、とにかく可愛い!手乗りサルです。
フィリピンタルシウスは非常にストレスに弱く、人に捕まると自分の頭を硬いものにぶつけたり水菜中に頭を突っ込んだりして自殺することもあるそう。
また、カメラのフラッシュなどでも同様の行為をする傾向があるため、観光客はかなり気をつけて観察しなければなりません。
「タルシウスを直視してはいけない。もし目が合ってタルシウスが涙を流したら、タタルシウスはショックで死んでしまう」とも伝えられています。
繊細でデリケートな生き物なのですね。
■ジンベエザメ
名前の通り、着物の甚兵衛のような模様があるサメ。
最大全長12メートルあり、世界の熱帯から亜熱帯の表層に生息します。
すべての魚類の中で現生最大の種と言われるサメですが、動物プランクトンなどの小さい餌しか食べず、性格は温厚で人を襲うようなことはまずありません。
その生態は謎に包まれており、1995年に台湾で捕獲された個体から300個体の胎児が見つかったことから、卵生ではなく胎生であることが明らかになっています。
セブシティから車で2時間半ほどのところにあるオスロブという海の浅瀬にジンベエザメがたくさんやってくるため、フィリピンではダイビングシーズンになると一緒に泳ぐツアーなどが多くなります。
日本では沖縄の「美ら海水族館」で飼育されていることでも有名です。
■フィリピンイーグル
別名サクルクイワシと呼ばれる、フィリピンの固有種です。
サマール島、ミンダナオ島、ルソン島、レイテ島に生息しています。
翼を広げると2メートルにもなり、たてがみのような羽が特徴的。
全長および翼の面積は現在生存しているワシの中で最大です。
その名の通り、リスやネズミ、コウモリなどの小動物だけでなくサルやブタまでも食べるという鋭いクチバシが特徴となっています。
乱獲によって生息数が減っており、野生での個体数は200羽以下になっていることから、一羽殺すと懲役12年の刑が課されます。
フィリピンでは国鳥とされており、人工授精による繁殖などの保護策が進められています。
■オオコウモリ
フィリピンだけでなく、熱帯・亜熱帯地域のオーストラリア、日本でも小笠原諸島や沖縄などにも生息しています。
翼を広げた際の体調は1.8メートルにもなり、その大きさは映画「バッドマン」さながらです。
とにかく迫力があるその姿は見た瞬間恐怖すら覚えますが、別名「フルーツコウモリ」と呼ばれているように、主食は果物なので親しみやすい面も。
リアルな吸血鬼のようにも見えますが、血を吸うこともありません。
■ビサヤン・スポテッド・ディア
フィリピン中部の島々にのみ生息する固有種で、パナイ島とネグロス島に数百頭しかいないというシカの一種です。
大きさは犬程度と小さめで足が短く、夜行性で、濃茶色に淡い黄色の斑点が特徴的です。
過剰な狩猟や森林伐採などによって個体数が急激に減ってしまい、地元でも姿を見かけることは大変珍しい希少種となっています。
1990年の調査で確認されたのはわずか13頭で、現在は保護により200頭程度になっています。
■ラフレシア
直径90センチにも達する「世界最大の花」として知られています。
死肉や獣糞ではんしょくするハエが花粉を運んでおり、ハエたちを誘引するためにトイレのような腐臭を放つそう。
また、花の色や質感も死肉に似ており、不気味な雰囲気を漂わせています。
分厚い花弁は発泡スチロールのような質感で、割るとパキパキ音を立てます。
最初に発見された1826年当時は、「人食い花ではないか?」とも恐れられましたが、実際は触れても至って無害です。
インドネシアのボルネオ島やスマトラ島に生息していますが、フィリピンでもパナイ島などで独自の2種類の開花が確認されています。
熱帯雨林の中で茎も葉もなく大きな赤い花を咲かせますが、満開の状態が見られるのはわずか4、5日間で、しかも開花時期もあまりはっきりしていないという謎の植物です。
■ミンドロワニ
最大全長5メートル、体重200キロ〜500キロに及ぶ、クロコダイル属に分類されるワニです。
フィリピンの河川や流れの穏やかな淡水の止水域に生息しており、名前の通りミンドロ島で確認されています。
2002年には1,500キロの重さのミンドロワニがたまたま爬虫類の罠にかかり、話題を呼びました。
ファッション産業向けの販売を目的とした密漁により個体数が激減し、現在は絶滅の危機に瀕しているため、捕獲は禁止されています。
フィリピン南西部パラワン島の野生生物保護センターでは、ミンドロワニの繁殖プログラムも実施されています。
■ミンドロスイギュウ
別名「タマラオ」。
ミンドロ島のシンボルとされている絶滅危惧種です。
以前はルソン島にも生息していました。
1900年には10,000頭が生息していましたが、1969年には100頭まで減少。
しかし現在は再び個体数が激減し、20頭ほどしか生息していないそうです。
体調150センチ〜180センチで他の水牛と比較すると小さめですが、体重は300キロにもなります。
■フィリピンオウム
フィリピンのシアルガオ島、タウィタウィ島、パラワン島、ミンダナオ島西部、マスパテ島、サン・ミゲル諸島に生息する固有種のオウムです。
森林、マングローブなどに生息しています。
1970年代まではフィリピン広域に分布していましたが、セブ島やネグロス島ではすでに絶滅してしまいました。
生息地が破壊されたことなどにより数は激減していて、パラワン島で800〜3,000羽、フィリピン全域で1,000〜4,000羽と推定されています。
保護の対象となっているものの、マニラでは不法取引で500ドルほどで売られているそうです。
フィリピンの大自然はさまざまな生き物たちによってその生態系を保っています。
最近では環境汚染が原因でボラカイ島が閉鎖されたりと、私たち人間の意識も以前よりは高まっているようです。
しかし、それでも失われた種はたくさんあります。
これ以上森林や海洋を破壊し生物たちの居住地を奪わないよう、私たち日本人も含め世界のみんなが配慮していきたいものです。