マニラ最古の地区イントラムロス
フィリピンは実に多様な歴史を持つ国で、かつてスペイン、アメリカ、そして日本に統治されていた時代があります。
そのため、フィリピン各所にこれらの国々の文化や慣習の名残があり、現代のフィリピン人の言語にも影響しています。
そして、それらの時代に造られた建造物も数多く存在し、観光地化されている場所もあります。
首都マニラの「イントラムロス」もその1つです。
今回は、フィリピンに行くならぜひ訪れたいマニラ最古の地区であるイントラムロスを詳しく紹介していきたいと思います。
<イントラムロスとは>
イントラムロスは、16世紀にスペイン人によって造られたマニラ最古の地区で、パッシグ川の南側に位置します。
「イントラムロス」とはスペイン語で「壁の内側で」という意味(Intra=内側、Muros=壁)で、その名の通り高い壁と塀で囲まれた旧要塞都市となっています。
スペインに統治されていた時代には、ここがマニラだとされていました。
フィリピンは80%がカトリック教徒ですが、これは他でもないスペインの影響で、イントラムロス内にも数多くの教会や修道院、礼拝堂などが存在します。
また、大学などの教育機関もたくさんあります。
現在は、かつてのスペイン時代の面影を色濃く残す地区として、観光スポットともなっています。
<イントラムロスの見どころ>
旧市街イントラムロスの最大の見どころは、やはり宗教関連施設の数々です。
教会、修道会、礼拝堂、大聖堂などを含めて10の施設があります。
荘厳な教会を見ると、フィリピンがアジアで唯一のキリスト教国であることを体感します。
それでは、イントラムロス内で絶対に見ておきたい施設をご紹介しましょう。
■マニラ大聖堂
フィリピンカトリック教会の総本山です。
1581年に建造されましたが、その後天災や戦争などにより何度も破壊と再建を繰り返しています。
現在の建物は1954年〜1958年に造られたものです。
1981年と2015年にはローマ法王もこちらを訪れています。
中には4,500本のパイプを持つアジア最大のパイプオルガン、フィリピン人アーティストGalo Ocampoがデザインした美しいステンドグラス、彫刻、モザイク、祭壇画などがあります。
外観はドーム型の屋根が印象的です。
イントラムロスで最も重要と言える必見の建物です。
■サン・オーガスティン教会/美術館
マニラ唯一の世界遺産にもなっているフィリピン最古の教会です。
16世紀後半に、イエズス会のアントニオ・セデーニョの指揮で造られました。
何度も天災や戦争をくぐり抜け、奇跡的に破壊されずに建設された当初のままの姿で残っている貴重な建物です。
1993年に世界遺産に登録されました。
中には広い大聖堂、大きなパイプオルガンなどがあります。
現在ではカトリック信者たちの結婚式場としても使われています。
教会の隣には元修道院であったところを改造した美術館があり、宗教関連の絵画などを鑑賞できます。
■サンチャゴ要塞
マニラ湾を見渡す監視所としてミゲル・ロペス・デ・レガスピによって造られた、スペイン軍の軍事施設です。
イントラムロスの北端にあり、完成までに150年かかったと言います。
要塞としてだけでなく、刑務所や軍事拠点として使われていた歴史もあります。
フィリピン独立の際には、国民的英雄のホセ・リサールがここに投獄されていました。
サンチャゴ要塞の内部には、彼の使っていた家具や服、描かれた絵などが見られるリサール記念館もあります。
■キアポ教会
1582年に創立され、何度も家事や地震で崩壊し、修復が繰り返されてきました。
建設当初はニッパヤシと竹で造られていましたが、現在は石造りとなっています。
ここには、縁起が良いとされる黒いキリスト像「ブラックナザレ」があります。
癒しのパワーがあると言われているこの像の足に触れると、願いが叶うとも言われています。
多くの露店が並ぶフィリピン最大のマーケット「キアポマーケット」の中心にあります。
このマーケットは地元民で大変賑わっていて見ているだけでも楽しいですが、人が多くスリに遭いやすいので気をつけましょう。
■カーサ・マニラ博物館
スペイン統治時代の建築と生活様式を保存する博物館です。
1850年に建築家J. Ramon Lによって造られました。
スペイン植民地時代の絵、アンティーク家具、装飾品が展示されているほか、当時のスペインの貴族の暮らしが見える演出は、歴史好きならワクワクしてしまうはず。
中庭の小さな噴水が何ともスペインらしくて印象的です。
また、お土産屋さんカフェも併設していますので、疲れたらそこで一休みするのも良いでしょう。
サン・オーガスティン教会の向かいにあります。
■リサール公園
フィリピンの国民的英雄ホセ・リサールを記念して造られた公園で、園内には彼の像もあります。
都市部にある公園としてはアジア最大級。
58ヘクタールある敷地内には、美しく手入れされた庭園のほか、噴水、子供向けの遊び場なども用意されています。
リサール像に次いで見ておきたいのが、1ヘクタールあるラン園。
ランだけでなく、熱帯植物、シダ植物などが生い茂っており、トロピカルなジャングルの景観を楽しめます。
その他、たくさんの蝶たちが見られるバタフライ・パビリオン、池、噴水、動物の彫刻、すべり台など、家族で楽しく過ごせる施設があります。
夕方には「Dr. ホセ・リサールの殉死」という音と光のショーも行われます。
<イントラムロスへの行き方>
マニラ市内からならどこからでも、タクシーで300〜400ペソほどです。
ただ、イントラムロスは広いので、行きたいスポットを指定して行くと良いでしょう。
自分でタクシーで行くのはちょっと・・という方は、旅行会社のパッケージツアーに申し込めば安心です。
イントラムロス内の主要箇所を効率よく周ってくれます。
また、最寄りであるマニラMRT1号線のセントラル・ターミナル駅まで電車で行くこともできます。
イントラムロスまではこの駅から歩いて25分ほどかかりますので、自転車タクシーを利用すると良いでしょう。
安く行ってもらうには交渉が必要なので、英語が分かる人向けです。
<イントラムロスを効率よく周るには?>
イントラムロス内の施設は基本的にすべて隣接していますが、効率よく周ることで全てをしっかり楽しむことができます。
もちろん、個人の好みにもよりますが、徒歩で周りたい場合、
サンチャゴ要塞 → マニラ大聖堂 → サン・オーガスティン教会
といった順番だと歩きやすいでしょう。
また、歩きたくないという方には、イントラムロス内で乗れる「カレッサ」もしくは自転車タクシーで周ってもらうと便利です。
「カレッサ」とは4輪馬車のこと。
30分550ペソ(約1,150円)ほどかかりますが、馬車に揺られて非日常な時間を過ごすのも楽しいと思います。
自転車タクシーとは読んで字のごとく自転車で周ってもらうことのできる移動手段で、30分350ペソ(805ペソ)ほどです。
交渉次第で割引も可能です。
<イントラムロス内での注意点>
イントラムロスは観光地であるためぼったくりや怪しい物売りなどもたくさんいます。
知らない人に話しかけられても聞かないようにしましょう。
また、貧困層の人たちも近くに住んでいるので、治安が特に良い場所でもありません。
人通りの少ない狭い道には入らないようにしてください。
ポイントとしては、やはり日が落ちてくると犯罪率も上がってくるため、早い時間から周ると良いと思います。
だいたいどこも朝8時くらいにはオープンしていますので、午前中だけでも十分周りきれます。
いかがですか?
フィリピンの歴史と文化を肌で感じられるイントラムロスは、どこを見ても荘厳で一見の価値ありです。
ちなみに、近くにはチャイナタウンもあるので、ついでに立ち寄ってみるのも良いかもしれません。
西洋文化、中国文化、そして地元のフィリピン文化が混在するフィリピンは、知れば知るほど好奇心が刺激されます。