フィリピンを腐敗させたマルコス政権とドゥテルテ政権のこれから
今でこそ急速な経済発展を遂げているフィリピンですが、ほんの数年前までは政治のシステムが腐敗しており、貧富の差もずいぶん大きくなりました。
現在も、BGCやマカティなどの大都市圏から少し離れるだけで、汚いゴミのだらけのダウンタウンに暮らす貧困層の人々やストリートチルドレンと遭遇します。
犯罪率は世界的に見ても依然として高く、麻薬もなかなか根絶できません。
資源も豊富にあり、人口も増え続けているこの国で、なぜまだこのような状況が残っているのでしょうか?
その要因は、マルコス前政権にあると言われています。
<マルコス前大統領の独裁政権>
フィリピンで20年間に渡って権力を握っていたフェルディナンド・マルコス氏。
彼はフィリピンの第10代大統領であり、独裁者でした。
1965年に大統領に当選し、69年に再選され、禁止されていた戒厳令を発布して新憲法を制定し、74年に3回目の当選を果たします。
非常に頭の切れるタイプでしたが、その能力は国民の生活を良くすることには使われず、彼の政策は外国資本と結んで開発を進めていくというもの。
アメリカや日本に実質的には経済を握らせながらも、利権によって私腹を肥やし、反対派がいれば裏社会の人脈を使って黙らせるという方法をとっていました。
その結果、フィリピン政府では長期にわたって政治家や官僚の汚職が蔓延します。
経済も低迷しはじめ、財政も完全に外債に依存するようになりました。
それによって国民の生活は苦しくなり、国民の間にも犯罪は増え、麻薬ビジネスが横行するようになりますが、本人は妻のイメルダ氏とともに大統領府で豪華な生活を送っていたそうです。
のちにマルコス夫妻がハワイへ亡命したあと、大統領府のイメルダ氏の部屋からは彼女が集めていた高級な外国製の靴が3,000足、そして贅沢な宝飾品が大量に見つかったというエピソードも伝えられています。
<ニノイ=アキノ暗殺事件>
そんなマルコス大統領を激しく非難したのは、国民的な人気のあったニノイ=アキノ氏です。
これに対しマルコス大統領は戒厳令を強いてアキノ氏を逮捕します。
その後、アキノ氏は病気治療のためにアメリカへ渡りますが、フィリピンへ帰国したところ、マニラ国際空港で警察に殺害されるという事件が起きました。
<マルコス政権の崩壊>
これを機にフィリピン国内ではマルコス政権への反発が強まり、「ピープルパワー革命」が起きます。
フィリピンの民主化を実現させた革命で、「エドサ革命」や「二月革命」とも呼ばれています。
ニノイ=アキノ新大統領を支持する市民がマニラのエドサ通りに集まり、マルコス軍と戦いました。
マルコスは妻とともに米軍のヘリコプターでハワイに亡命しますが、同時にマルコス政権は崩壊することとなります。
そして1989年にハワイで死去しました。
この革命は、アジアの民主化を実現した象徴的な出来事となっています。
<救世主?ドゥテルテ大統領の誕生>
そんなマルコス政権の尻拭いをするべく立ち上がったのが、ロドリゴ・ドゥテルテ現大統領です。
麻薬犯罪が蔓延し、汚職はあとを絶たず、国民は飢餓に苦しみ、仕事はなく、まともな教育も受けられていない。
そんな状態のフィリピンから、まずは麻薬犯罪の根絶と汚職を排除することを目的としていますが、そのやり方は、「殺す」という実にストレートな方法でした。
これに対する批判の声や反発があるのは当然のことだと思いますが、しかしやはりここまで腐敗してしまったフィリピンを変えるには、必要なことなのかもしれません。
少なくとも、そう思っている国民が大勢いるからこそ、ドゥテルテ大統領は支持されているのです。
彼は、もう一度フィリピンが健全で豊かな国へと生まれ変わるために現れた救世主なのかもしれません。
<フィリピンが変わるには、国民が変わる必要もある>
そんなドゥテルテ大統領がフィリピンのみならず世界中から期待されていることは間違いありません。
しかし一方では、まずフィリピン人の国民性を変えていくことも必要ではないかと思います。
フィリピン人は楽天的で一緒にいると楽しいですが、日本人のような勤勉さやハングリー精神のようなものはあまり感じられません。
簡単にいうと、向上心が低いのかもしれません。
そんな国民性を作り上げたのは、これまでの政権のシステムであるとも言えるでしょう。
一生懸命勉強や仕事をしても報われない時代が長かったせいなのかもしれません。
しかし、これからフィリピンはどんどん変化していくと思われます。
ドゥテルテ大統領の功績もあって、国は少しずつ平和に近づいてきていますし、海外からの企業参入も増えて雇用も生まれています。
仕事ができれば経済もまわり、学校に行って真っ当な教育を受けられる子供たちも増えます。
そして良い教育は、良い社会人を生み出し、国の経済を動かす力になります。
せっかく1億人以上の人口を抱え、英語力も申し分なく、豊富な労働力と資源を確保しているのです。
フィリピン経済にポジティブなループが出来上がり、この国がアジアで先頭を切るリーダーになる日もそう遠くないのではないでしょうか。