フィリピンの個人消費と経済、インフレ問題
フィリピン経済が好調な理由の1つとして、個人消費の大きさが挙げられます。
貧富の差が大きい国、というイメージがあると思いますが、実はフィリピン人はお金をそんなに持っていないのに、どんどん使ってすぐに手元からなくなる、という傾向がすごく強いのです。
GDPに占める個人消費の割合は、なんと70%。
日本は60%程度、中国は40%程度、そしてインドでも60%ほどですので、フィリピンがどれだけずば抜けているかわかります。
実は70%という数字は、アメリカの消費と同じくらいです。
簡単に言うと買い物が大好きなんですね。
<”世界で最も楽観的な消費者”>
世界最大級のマーケティング調査&データ分析で知られる会社「ニールセン」のグローバル消費者景況感調査によれば、フィリピンのスコアは世界平均の98を大きく上回って132であったそうです。
この数値が100以上だと楽観傾向、以下だと悲観傾向を意味します。
これにより、フィリピン人は、世界で最も楽観的な消費者である、と報告されました。
フィリピン経済は個人消費に大きく依存していることがわかります。
また、消費が大きいフィリピン人は、貯蓄をしている割合も高くなっています。
基本的に浪費家で貯金ができない人種と言われてきましたが、近年はそれも変化してきているようです。
その貯蓄は何に使われるかというと、休暇、自宅の手入れや装飾、衣料品、最新技術製品とのこと。
確かにフィリピン人は電子機器や機械製品が大好きで、スマホだとかタブレットのガジェットの最新モデルを常にチェックしています。
ちなみに消費者のスコアが次に高かったのは130のインド、3番目が128のインドネシアでした。
東南アジアは今全体的に発展が進んでいるので個人消費も増加傾向ではありますが、フィリピンほどの勢いはありません。
<給料日は月2回>
フィリピンの一般的な企業は、給料日が月2回あります。
これはなぜかというと、フィリピン人は一度に全部渡してしまうと次の給料日が来る前にすべて使い果たしてしまうからです。
とにかく手元にお金を残しておくのが苦手なんですね。
2回に分けることで、使いすぎを防げますし、消費も分散できます。
しかしこれが、国全体の制度だというから驚きです。
国民みんなが”宵越しの銭は持たない”主義というわけです。
しかし、だからこそ経済が上手く回り、国が発展しているとも言えます。
日本は真逆で、必要のないものは買わない、無駄遣いをしない、というスタイルが基本ですし、ましてや持ち金を全部使ってしまうなんてありえないですよね。
フィリピンの例は少し極端かもしれませんが、消費によって経済を動かすには、ちょっとだけ見習った方が良いかもしれません。
<クリスマス時期の消費>
そんなお買い物大好きフィリピン人の購買意欲が最も高まるのは12月のクリスマス時期です。
フィリピンは東南アジア唯一のキリスト教国として知られていますが、クリスマスの盛り上がりは半端じゃありません。
準備はなんと4ヶ月も前の9月頃から始まり、デパートなどの商戦は翌年の2月頃まで続きます。
家族、友人、恋人にプレゼントを買ったり、パーティ用の食材を買ったりと、とにかく大忙しです。
ショッピングモールではクリマスセールが行われており、普段の3倍近いお客がいます。
また、人々の移動が増えるため、タクシーもつかまりにくくなります。
<最近は少し低迷?>
そんな個人消費が激しいフィリピン人ですが、ここ数年は少し個人消費が減ってきているようです。
その原因は、インフレです。
経済成長の真っ只中にあるフィリピンは今、深刻なインフレ問題に悩まされています。
物の値段が上がってしまったため、いくら買い物大好きなフィリピン人でも、物が買えない状況になってきているのです。
贅沢品ならともかく、ガソリンや食品などの生活必需品の値段が上がっており、国民の生活は圧迫されてきています。
物価が上がって給料は以前のままなのですから、消費が減るのは仕方ありません。
しかし、このまま消費が減少し続ければ、経済成長もスピードダウンしていくでしょう。
フィリピン政府は現在、行きすぎたインフレを抑えようと策を講じているようですが、なかなか目に見えて効果が現れていません。
<インフレ解消が課題>
個人消費は、フィリピンの経済成長にとって要となっていることは間違いありません。
海外出稼ぎ労働者(OFW=Oversea Filipino Workers)からの外貨流入も重要な要素の1つですが、国内での消費は不可欠なのです。
経済格差が大きいこの国では、中間層以上の人々がどれだけ消費するかが鍵になってくるでしょう。
ここにきて、どのようにインフレ問題を解消していくかが今後のフィリピン経済を左右しそうです。