ボラカイ島の閉鎖と再開、フィリピン経済への影響は?
過去数年の間に急速に観光業が発展したフィリピンのボラカイ島。
世界中から大勢の観光客が訪れるようになり、フィリピン経済の一助となっていましたが、環境破壊が問題となり、その対策に追われています。
4月に一時閉鎖、10月に一部再開しました。
半年間の間にどんな動きがあったのでしょうか?
今回は、今年フィリピンのボラカイ島で起こった一連の流れについてまとめてみます。
<ボラカイ島とは?>
フィリピンは7,000以上もの島から成る国で、まだ手付かずの自然や美しいビーチを持つ島もたくさんあります。
フィリピン中部に位置するボラカイ島もその1つです。
南北に約7キロ、東西に約2キロしかない小さな島ですが、どこまでも続く青い海と青い空、そして白い砂浜は、一度見ると忘れられません。
最大の名所である「ホワイトサンド・ビーチ」は、昼間はもちろん夕日が沈む様子も必見の美しさで、非日常を感じさせてくれます。
アメリカの旅行誌「トラベルレジャー」や旅行サイトの「トリップアドバイザー」などにおいて、世界のベストアイランドやベストビーチに何度も選ばれています。
毎年大勢の観光客が世界各国から訪れ、海水浴やマリンスポーツを楽しんでいました。
特に欧米からの旅行者に人気ですが日本人観光客も多く訪れており、2017年の訪問客は約200万人。
過去5年間で1.6倍に増えました。
<海洋汚染が進んでしまったボラカイ島>
しかし、増え続ける観光客によって、ホテルや飲食店などからゴミや汚水、廃棄物が大量に排出されるようになり、環境破壊が問題になりました。
開発が進むとマングローブが減り、一部のビーチで藻が大量発生。
かつての輝きを失い始めます。
また、マナーの悪い旅行者がビーチの砂を持ち帰るようになり、貴重なホワイトサンドが枯渇することも心配されていました。
<2018年4月より半年間ボラカイ島閉鎖>
ドゥテルテ大統領はこの状況を見てボラカイ島の海を「汚水溜め」と表現し、今年の4月に環境汚染改善のため島を一旦閉鎖することを決めました。
閉鎖している半年間の間、観光客の立ち入りを禁じたのはもちろんのこと、違法に建てられた施設が取り壊され、海に流れ出る汚水の排水管は撤去され、排水処理施設も整備されました。
<2018年10月、一部の観光客受け入れ再開>
そして6ヶ月経った10月、状況は改善に向かっているとして、一部の観光客の受け入れを再開しました。
ただし、今後1年間は宿泊できる人数を閉鎖前の19,000人から6,000人へと削減するとのこと。
ビーチでの飲食店営業、マリンスポーツ、パーティ、パラソルやデッキチェアの使用、バーベキュー、プラスチック製やストローの使用、ペットの連れ込みは禁止です。
違反者には高額な罰金が課せられます。
また、カジノも禁止されたほか、パフォーマンスとして行われていたファイアーダンスもやめたそう。
こういった厳しい規制が適用されたため、以前のような賑やかさはないものの、観光資源としての魅力は高まっており、確実に島はクリーンな環境になったようです。
フィリピン航空は、空港のある隣の島とボラカイ島を繋ぐフェリーの運行も開始するとのこと。
<ボラカイ島以外の島も環境保護を検討>
今回のボラカイ島の閉鎖によってずいぶん環境が改善されたため、フィリピンの他の島でも対策していく動きが出てきています。
「フィリピン最後の秘境」と呼ばれるパラワン島をはじめ、ジンベイザメと一緒に泳げるセブ島オスロブも環境破壊が懸念されているため、今後は観光客を半分に減らしたい考えだそうです。
<フィリピン経済への影響は?>
しかし、観光地を次々と閉鎖すれば当然ながらそこで働く人々が職を失うことになります。
環境規制を進めることによって地元経済が低迷してしまう、というのは難しい問題です。
フィリピン政府としては観光客自体を減らしたいわけではなく、2020年までに外国人観光客を2017年より50%増加させて1千万人にしたい考えです。
<ドゥテルテ大統領の考え>
ドゥテルテ大統領は、自然が多く残るミンダナオ島の出身。
大統領に就任後、国民に人気の環境保護活動家を環境資源相に起用したほか、鉱山の閉鎖を求めました。
目先の利益ではなく、長期的にみたフィリピンの自然保護を優先すべきと考えているようです。
確かに観光業のために自然を破壊し続けていれば、いずれにしても島は長くはもたないでしょう。
適度に厳しいルールを設けた上で、観光業における利益損失がないようバランスのとれた対策が必要になりそうです。
また、観光客への注意喚起の方法も考えていくべきかもしれません。
将来的に島がダメになってしまったら、悲しい思いをするのはフィリピンの人々だけではないはずです。