フィリピン日本語教育の歴史と事情
フィリピンでの日本語教育は、他のアジア諸国と比べると、まだそれほど進んでいません。
しかしそれでも、日本語を教えている機関は177以上あり、学習者の数は、3万人を超えています。
そのほとんどが、高等教育の過程で行われています。
フィリピンの日本語教育が最初に始まったのは、1923年のことです。
戦時中には軍政の一環として日本語教育が推進されました。
当時は日本語を公用語として浸透させるべく教育されていたのです。
戦後は、1964年にフィリピン大学東洋言語・言語学学科に日本語講座が開講され、1968年に在フィリピン日本国大使館広報文化センター日本語普及講座というものが開設されました。
内容としては、初級〜中級の会話中心のものでした。
その後、1990年代に入ってからは国語重視の方針が打ち出され、フィリピノ語が見直されたとともに、日本語や中国語などの外国語教育の必要性も重要視されるようになりました。
近年、日本語教育の主な目的は、IT関連や介護、看護などに必要な人材の育成です。
また、フィリピンに日系企業が多数進出していることから、フィリピン人にとって日本語は、ちゃんとした仕事を得るために重要なツールとなってきています。
おかげで日本語学習者の数は年々増加しており、日本語が選択できる大学や機関が増えています。
2008年に教育省が、外国語教育プログラム「Special Program in Foreign Language」を導入してからは、日本語とともにスペイン語やフランス語の教育も始まりました。
それと同時に、これまでは私立高校でしか行われていなかった日本語教育が、公立高校にも取り入れられました。
それからは日本語学習者は大幅に増加しました。
特に近年は、日本のアニメやポップカルチャーに興味を持つ外国人が増え、日本語を学びたい人口が増加しています。
フィリピン人も例外ではありません。
一般の大学の授業ではスペイン語やフランス語も選択できますが、日本語は特に人気です。
ただ、学習者人口は増えているものの、課題は彼らのレベルです。
日本語能力試験(JLPT)の受験者は3〜4級が主で、決して高くはありません。
実際に日本語使って働くには少し厳しいレベルになってしまいます。
フィリピン国内では、初級レベル以降の日本語を教えている機関が非常に少ないのです。
また、無資格で教えているいい加減な日本語学校が多いことも問題視されています。
日本語教育を行なっている機関の60%を占める高等教育においても、必修ではなく、あくまで選択科目の1つです。
今後は、行政レベルで、第二外国語教育への支援や質の向上に対する具体的な施策が必要と言えます。