フィリピン人の日本語能力とその重要性
フィリピンでは日本語を話す人口はそう多くありません。
韓国や中国などの東アジア、タイやマレーシアなどの東南アジア諸国では、日本のアニメや映画などのサブカルチャーをはじめ、日本・日本語に興味を持っている人口が大変多いのですが、フィリピンではどうやら事情が違うようです。
その理由として、フィリピンには英語話者が多いから、というのが1つ挙げられると思います。
フィリピン以外で、ここまで英語が浸透し、標準的に通じるアジアの国は他にどこにもありません。
すでに母国語であるフィリピン語と英語の二刀流であることから、新たに第3言語として日本語を学ぼうというモチベーションは、あまりみんな持っていないのでしょう。
英語が話せればとりあえずは誰とでも話せるわけですから、コミュニケーションに特に困っているわけでもないのですね。
外国人の日本語能力を測るものとして最もスタンダートなのが、「日本語能力試験」(JLPT)と呼ばれているテストです。
JLPTにはN1、N2、N3、N4、N5の5段階のレベルがあります。
N1が最も上級です。
語彙、文法をはじめ、N2やN1になると新聞記事の理解や評論もできるようになるレベルです。
フィリピンは、JLPTの受験者数でいうと、主要アジア諸国でなんと最下位。
1位の中国が20万人受験しているのに対し、フィリピンではたった3,000人にとどまっています。
しかも、受験者数の半数近くはN4を受験しており、高い日本語能力を持つフィリピン人が非常に少ないことが分かります。
ですので、「日本語が話せる!」というフィリピン人がいたとしても、ビジネスレベルにまで至っている人を見つけるのは簡単ではないでしょう。
現地で会社を興してフィリピン人を雇おうと思っても、まずは自分が英語を話すことを学んだほうが早そうです。
しかしながら、実はフィリピン人の日本語能力向上は今後大変重要になってくると思われます。
その理由は、日本が外国人の労働者を必要としているからです。
特に、看護師や介護福祉士は深刻な人手不足となっており、外国人を受け入れる以外に対処する方法がありません。
日本で働いてもらうためには、どうしても日本語能力が必要になります。
数少ないフィリピンの日本語学習者の動機は、そのほとんどが「日本で働くため」です。
日本の賃金が高いことはもちろんですが、日本の技術や生産的な仕事の仕方などを学びたいと考えているフィリピン人がいます。
日本は現在、フィリピンと二国間の経済連携協定を結び、彼らを積極的に受け入れようとしています。
日本語での研修を用意し、できるだけ試験に合格できるようサポートしているのです。
日本語能力試験や日本語での国家試験に合格できず、泣く泣くフィリピンへ帰っていくフィリピン人も多くいます。
しかし、日本において彼らの力が必要であることに変わりはないですし、日本で働きたいという彼らの希望も叶えてあげたいものです。
今後は、どうすればもっとスムーズにフィリピン人が日本で働けるようになるのか?日本語習得を早めるには何が効果的なのか?などを、考えていくことが必要ですね。